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メキシコの教会建築はかなり独特だと思う。
その空間には、「教会」と聞いて思い浮かべるイメージには当て嵌まらない、異質な雰囲気が広がっていると思うのだ。
キリスト教の布教が始まり、各地に教会が立てられる。それはキリスト教の歴史の中で珍しいことではない。
しかし、メキシコではキリスト教と元々そこにあった土着の文化が上手く混ざり合い、これまでにない変化を遂げた。
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メキシコのキリスト教はスペインによってもたらされた。
バロック様式は16世紀にイタリアで生まれ、ルネサンスに対して異端であることから「歪んだ真珠」という意味で名付けられたそうだ。
その後、このバロック様式はスペインでイスラム様式と混ざり、独特なスペイン・バロックが出来あがる。イスラムのモザイクやアラベスク文様、タイルがキリスト教建築に組み入れられるようになったのだ。
そんなスペインのバロック様式が、キリスト教の伝来と共にメキシコに伝わった。
メキシコで教会を作る時に指揮したのはスペイン人でも、直接手掛けて作り上げるのはメキシコにいる人達になる。メキシコの土着の文化背景が多分に混ざりあい、バロック様式は更に変化を遂げた。
それが、メキシコのバロック様式。
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イタリアで生まれたものが、スペインで変化し、メキシコで更なる変化を遂げる。ウルトラ・バロックと呼ばれるのは1730年代から黄金期に入ったメキシコのバロックのことで、装飾的な要素が更に強くなり、色彩も躍動感も増してきた。
そして、メキシコで目にする独特の教会には、褐色の肌のマリア、髑髏を抱いた聖人、インディへナ(先住民族)の顔と羽根だけの天使。空間を残さず所狭しと埋め尽くされた装飾は全体が金色なのだ。そこに更に原色が加わるとどうなるか。
これはキリスト教というよりは魔術的な印象を受ける。
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圧倒されて、言葉もなく、その空間に取り込まれてしまう。 |