死者の日 <Dia de Los Muertos>

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 カトリックでは11月1日が万聖節(諸聖人の記念日)、11月2日が万霊節(諸死者の記念日)となっている。万聖節というのは全ての聖人を讃え祝う日で、万霊節はまだ清められていない死者の魂を祈る日なのだそうだ。そして、その前夜祭が10月31日のハロウィンで、これは異教徒ケルト人の習慣が元になっているという。
 メキシコでは、古代アステカ暦(20日の単位で現在の月にあたるものを設定)の10番目の月が「トラショチマコ」と呼ばれ、死んだ子供達の為のお祭り。その次の月を「ショコトルウェツイ」と呼び、大人の死者の為のお祭りがあった。これは現在の暦でいうと7月〜8月なのだそうだが、スペインに征服されたメキシコがキリスト教に改宗させられたとき、カトリックの祭日とアステカの祭りが上手く融合されて現在の「死者の日」になったというのだ。

 「死者の日」は、言ってみれば日本のお盆のようなものだ。
 「死者の祭り」をする国はいくつかあるが、メキシコのそれはしめっぽいものではなく、ラテンの国らしく陽気で楽しいお祭りとなる。
 戻ってきた死者を迎えて、この世の人もあの世の人もみんな一緒に騒ぎましょう。お祭りしましょう。とい感じ。

 死者の日が近くなるとオフレンダという祭壇が家や店先に作られます。
 市場にはガイコツを模ったチョコレート菓子や砂糖菓子が並べられ、ガイコツのミニオブジェも沢山売られ、オフレンダを飾ったり墓地でお墓に飾られたりします。砂糖菓子ドクロには白いものがあったり、いろんな色をしたものがあったり、大きさもさまざま。この左側の写真の砂糖菓子ドクロは、小さく色がついたものですが、大きいものでは手のひらサイズなんてものまであります。
 なぜガイコツなのか。
 それは、死者の象徴。また、メキシコでは壁画や絵画などにもよく登場し、大統領をガイコツに模した飾りなんてのもあったりする。風刺としてよく使われているので親しみがあったりするのかな。イメージは明るく、愛嬌がある。おどろおどろしい雰囲気ではないですね。なんだかお茶目さん、って感じ(笑)。
 ま、そんな訳で、普段からガイコツものはあるんだけど、「死者の日」前にはいつも以上にガイコツが氾濫するのです。市場に行ってもガイコツだらけ、道を歩いてもオフレンダや店先にガイコツオブジェ。
 そして、「死者のパン」という甘パンも大量に売られています。もう、市場一角がそれだけ、って感じ。この写真は両腕で体を抱きしめているようなパンで足までついているけれど、よく見かけたのは丸いパンに顔がついていてゴマがふってあるもの。
 これもオフレンダに飾られています。自分達で食べたりもするみたい。パンが死者の体で、顔は死者の顔、と言っていました。そして、ちぎってチョコレート・ドリンクに浸して食べるんだとか。

 11月1日は子供の魂が戻ってくる日。2日は大人の魂が戻ってくる日。
 これは上記で書いたアステカ暦が関係しているのだと思います。
 10月31日の深夜から子供の魂が戻ってくるというので、その夜は墓地に集まり朝まで騒いでいるようです。
 今回、私達も墓地を巡るツアーに参加してきましたが、もうホント大騒ぎのお祭り状態! お墓にもよるんだろうけど、墓地の周辺には屋台が出て食べ物や飲み物やお土産ものなどを売っているし、子供も大はしゃぎして花火で遊んでいます。
 朗々と聖書か何かの一節(だろうと思う)を謳い上げている人達もいたけれど、大体の人達はお墓の周りに集まって話をしたりして一晩中過ごすみたい。写真のようにすごく可愛くガイコツオブジェを配しているお墓があったので、写真を撮らせてもらっていいかと声を掛けたら喜んで迎え入れてくれ、ワインをご馳走になったりもしました。
 この「死者の日」の祭りはメキシコ全土どこでもやっているけれど、伝統的なことで有名なのはパツクアロ近郊のハニッチィオ島。そして、私達が今回来たオアハカ。
 オアハカのセントロ(町の中心)付近では明るい時でも暗くなってからでも時折パレードが練り歩き、仮装した人びとが所々で止まっては楽隊の演奏にあわせて踊ったりしてました。滞在期間中(10月30日〜11月2日)は毎日どこかでこのパレードに出逢ってました。
 なぜかセントロの周りの道にはこんなものが出来てたりもして。これは何かのイベントがあったのかな?
 宿泊したホテルは町から少し離れていたんだけど、それでも当日は夜遅くまで近くから音楽が聞こえていたし、親しくなったホテル従業員に教えてもらって、近所のオフレンダが飾ってある家に連れて行ってもらったりもしました。
 11月1日の夜。家の前の道路をいっぱいに使い、屋根テントを張って椅子を用意し、ご近所さんに食べ物や飲み物を振舞って祭壇の前で集まっていました。
 チョコレート・ドリンクやミルク、コーラなどのソフトドリンク。そしてオアハカ料理。葉っぱでモレと鶏肉を包み蒸しにしたものや、オアハカチーズをトルティージャで挟んだもの等。
 ホテル従業員が口利いてくれたからとはいうものの、全然オッケーでその輪の中にいれてくれたのは嬉しかったなー。ここの人達は気さくで懐が深い。


 そんな「死者の日」の祭りは、メキシコの人達の懐の大きさを表しているようだった。

死者は特別な存在ではなく、生者と共にそこにある。
 「死者の日」が近くなると、より一層強くそう感じる気がするのだ。
 死者(死)は特別なものではなく、誰の身近にあるもの。
ガイコツは怖いものではなく、むしろ陽気で愛嬌のあるもの。

私はメキシコのこの雰囲気が大好きだ。

last up date/2003.11.19


:参考ページ:
http://www.e-denime.com/fp/vol03_32.html
http://www.mysnco.com/2002-8.html
http://kazukari.hp.infoseek.co.jp/number19/topic.html
http://www.pumatech.co.jp/puma/svnow20011114.htm
http://www.hananoatorie.co.jp/stor/haro.html