■アブ・ミーナ(Abu Mena)












アレクサンドリアからセルビスで約1時間半。
エジプト人の約1割が信仰するコプト教の巡礼地で、近くには世界遺産になっている遺跡もある。
イスラム教徒の多い国ではモスクに行くことはあっても教会に行くことは少ない。
キリスト教徒の多い国では教会を見つけると入りたくなってしまう。
イスラムの国では教会の数も少ないので入る機会もなく、アブ・ミーナは世界遺産にもなっているというので旅友から提案があった時に即決で行くことを決めたのだ。

チェックアウトをして旅行荷物を持ったままアレクサンドリアの鉄道駅の前からセルビスに乗り込む。
旅行荷物といってもソフトスーツケースはカイロの旅友宅に預けてきているのでスポーツバッグとリュックのみ。
アレクサンドリアに戻ってきたらそのままカイロ行きに乗り継ごうと考えて、荷物を持ったまま移動することにした。
アブ・ミーナへ寄るセルビスを探して乗り込むと、ほどなく満席となりセルビスは動き出す。
しかし途中で事故渋滞の為まったく動かなくなり、アブ・ミーナへ到着した時には正午を回っていた。
降りる人は少なかったが、私たちの前の座席に座っていたエジプト人の中年男性も一緒に降りてこちらに話しかけてきた。
どうやらよくここへ来る人のようで、本来なら観光客は入口で身分証明(パスポート)の提示が必要なところ、
『私と一緒だから大丈夫』とそのまま中へ入れることに。

中に入った後もそのまま案内をしてくれて、アラビア語と英語を交えてこの教会の一通りの説明までしてくれる。
駐車場のスペースを通り抜け、門を通って広い敷地の中に入ると教会グッズを売る売店があり、修道院や大聖堂、いくつかの教会や宿舎まで揃って一通り生活できるようになっている。

ここに入って目に着くのはラクダのモチーフ。
砂漠の土地だからかと思ったらそれだけではなく、アブ・ミーナに奉られている聖人にまつわる話からきているようです。

向かい合って座る2頭のラクダの真中で、両手を軽く上げて立つ聖人が描かれたものを至る所で目にするアブ・ミーナですが、この真ん中に立つのが聖人メナス。
メナスは元々兵士で、後にキリスト教徒であることを告白した為に拷問されて殉職。
その亡骸をラクダに乗せて運んでいたところ、途中で動かなくなってしまったのでその場所に埋蔵され、埋葬された場所こそがこのアブ・ミーナで、埋葬されるとそこからは水が湧き出し、その水を飲んだ人は患っている病が直ったという言い伝えから聖地となり、聖人メナスの信仰の地となったということなのだ。

そんな話を聞きながら大聖堂の中を見学して、大聖堂の後ろにある歴代当主の眠る廟の中にも連れて行ってもらう。
廟の中ではエジプトの大統領ナセルが訪れた時の写真が飾ってあったりもして、エジプトでも重要な場所なんだということが分かります。
また、ここでは願い事を紙に書いて箱の中に入れておくと願いが叶うと言われている、というので私たちもさっそく習って付属の紙に書いてみました。
確か、燃やして天に届けるとかなんとか。。。。
なんか日本のどんど焼きっぽい?(笑)
あ、どんど焼きは願い事じゃないか。

世界遺産の遺跡に行くかと言われたけれど、ここから車で5〜10分かかるというし、荷物も持っているし、今回はここまでにして中の建物を見て回ることにした。
まぁ、案内してくれたおっちゃんがあれこれ連れて回ってくれて、本当によく来ているみたいでここの修道士たちとも顔見知りの様子なのがラッキーだったというか、ちょっとうっとおしかったというか(笑)。
とある部屋で修道士から聖油をいただいたのだけど、その時におっちゃんが
『5分待っててくれ』というのを私たちは『5ポンドだ』と聞き間違えてしまってですね…。
5ポンド払おうとしたら修道士もおっちゃんもビックリ、お互い聞き間違いに気づいて大笑い、ってなことがあったのです。
これがまぁ、おっちゃんのツボに入ったらしく何かあるごとに
「ファイブパウンド」「ファイブパウンド」「わはははは!」と結局夕方別かれるまで言われ続けてたもんねぇ。
2〜3回なら「そんなにおかしかったかなー」で笑い話だけど、ひたすら言われるとしつこいって。。。

でもまぁ、食堂で一緒に食事をして(巡礼者の為に無料で開放しているようで、私たちのような観光客もダールという豆を煮たものとアエーシの簡単な食事とシャイの恩恵にあずかれる)、ここで作っているというアイスクリームまでおっちゃんにご馳走になり、最後は修道士に祝福までうけさせてもらえたのはとてもありがたかったのだけどね。
その後もアレクサンドリアへ向かうセルビルがなかなか来ないことに業を煮やしたおっちゃんがアブ・ミーナから出て行くバンを捕まえて私たちも一緒に幹線道路まで乗せてもらい、道路脇で降りたら通りかかったトクトクを捕まえて近くの町のバス乗り場(ターミナルという程の大きさではない)まで行き、そこからアレクサンドリア行きのセルビスに乗り継いで郊外のバスターミナルでカイロ行きのバスに乗り換えるまで面倒を見てもらったのは本当に助かったのだけれど。
カイロに到着した頃に旅友の携帯電話に到着したかどうか心配して連絡してくる所まではいい。
しかし翌日も電話してきて
『なにしてるんだ、みんな一緒か』とかまではちょっとー…。

アブ・ミーナの満喫っぷりは本当に有難かったのだけどね。


聖メナスのコプト正教会修道院
http://www.stmina-monastery.org/


last update / 2013.01.04