02■ラマダン・カリーム!















イスラムの陰暦で第9の月は「聖なる月」と言われ、太陽が出ている間は一切の飲食や喫煙が禁止される。
これを断食月、ラマダンと言う。


病人や妊婦や子供等、飲食が制限されると生命や成長に支障のある人々は断食をしなくてもいいし、もちろん旅行者も関係ない。
とは言ってもラマダン中は博物館や銀行なんかも早めに閉まるし、商店や飲食店も昼過ぎからイフタール(日没後の食事)が終わるまで数時間閉まってしまう所も多い。
いつもはアルコールを出している中級レストランもこの時ばかりはアルコールの提供を自粛するし、数少ない酒屋さんもすっぱり休業してしまう。

さて、今回はそんなラマダン時期に旅行期間が重なった。
出発前は各種情報から、期間中は公的機関も開いている時間が短くなるし、ベリーダンス・ショーも開かれなくなってしまうし、いくら観光客は断食をしなくていいと言っても飲食できない人の前でおおっぴらに飲み食いするのもはばかられる・・・。
などと不安要素は沢山あった。
幸いタンヌーラ(エジプトのスーフィー・ダンス。男性が演奏・踊る)はラマダン中でもやっているようなので、現地合流する友人達とラマダンを考慮したスケジュールを組んで出発した。

エジプト入りしたらまずはお互い別行動。
到着日は同じ宿に泊まり、翌日私はルクソールへ。
友人達は紅海リゾートのハルガダへ行き、9/12の朝に揃って再びカイロ入りするよう夜行で移動しようというものだ。

ラマダン入りは9/13の予定。
間近になっても「・・・の予定」とハッキリしないのは、イスラム教の偉い人(笑)が肉眼で月の様子を見て決めるからなのだそうだ。

「ラマダン」と聞いて私がイメージするものは、やはり断食。
日の出から日の入りまでの間は飲食できない、というものだった。
ところが、これがいざ自分がラマダン真っ最中のイスラム圏に滞在してみれば、考えてもみなかったお祭り騒ぎの日々だった。

確かに日中は静かだ。
特に早朝6時前後や夕方18時前後の時間は、ラマダン前や真っ昼間には交通量の多かった道路が人っ子一人いなくなってしまうのだ。
えーと、ここってカイロの新市街の中心の大通り(車道)だよね・・・?
道路のど真ん中で立ち止まって写真が撮れるんですけど。
なんでこんな状態になるの?
ここの人たちはいったいドコに行っちゃったの〜?

それは、ラマダンだから!

夕方なんて早々に家に帰って、ゴハンを前に今か今かと日の入りを心待ちにしているんだよね、きっと。
飲食店やホテルの前には貧しい人々の為にイフタールを振舞うテーブルが出来たりもする。
そういうテーブルには日の入り1時間前から人が座っている光景も目にしたことがある。
イフタールになると、待ってましたとばかりに店先のテーブルで数人集まって食べている光景もあちこちで見られ、そういう所を通りがかろうものなら、あちこちからお呼ばれの声がかかったりするのだ。
うんうん、やっぱ起きている時に半日以上何も口に出来ないと力も出ないし苦しいよね。
食べ物を口にできる喜びを分かち合いたいよね。
ラマダン中のイフタールは、そりゃもう1日のうちで最大の関心行事だ。

日中は多少不便だけど、一転、イフタールを終えた後の夜は一晩中お祭り騒ぎ。
町の商店は「ここは中華圏の旧正月か?」と思うような赤い色の壁紙が貼り付けられ、スークで上を見上げれば様々なテープ飾りが七夕飾りの雰囲気を醸し出す。
大小さまざまな大きさのランプが至る所で見られるのもラマダンならでは。
ルクソールで店先にずらりと取り揃えられたものを見た時はただのランプ屋だと思っていたけど、カイロに戻ってくればスークの店先、ファーストフード店の店頭、旅行代理店の入口等、あちこちでこのランプを見かけることとなった。
夜には灯りが灯ってとても綺麗だ。
日本の盆提燈のようなものなのだろうか。

夜になってイフタールを食べ、空腹が満たされたらここからがエジプト人の本領発揮(笑)。

ラマダン・カリーム!!!

町に繰り出し、スークはもはや大混乱。
あちこちのカフェでは男たちが集まってシャイを飲んだりシーシャ(水たばこ)をふかしたり、子供たちは爆竹を手に走り回っている。
朝や夕方はあんなに静かだった通りも、沢山の車で大渋滞。
タンヌーラを見て道端のカフェでシャイを飲んでタクシーで帰ったあの日なんて、やっと捕まったタクシーの運ちゃんが陽気すぎて運転が荒くて死ぬかと思った・・・。

ぎゃーっ! 運ちゃん、前! 前! こっち向いてしゃべってないで前見て運転してーっ!!
ハンドルから手ぇ離さないでよ!!
危ないってば! わーっ、死んじゃう! 人轢いちゃう!! 殺しちゃう!  kill him だよ!
むっちゃん、それじゃ「殺せ」になっちゃう〜(大笑い)

車内阿鼻叫喚。
私たちもおかしくなってた。
よかった・・・。
無事で・・・。
(私たちはもちろん、誰も轢かなくて)


いやもう、夜の大騒ぎの様子なんか見てると、どこが「聖なる月」なんだ、ってカンジだね。
ラマダンの認識が一気に180度変わったよ。
エジプトがそうだっただけかもしれないけど(笑)





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【写真:上】 
18時頃のタラァト・ハルブ広場に続く大通り

【写真:中上】
ラマダンの飾りつけ

【写真:中下】
イスラム地区の夜の一角

【写真:下】
ルクソールのラマダン・ランプ売り