トルコ出発前に渋谷のビールバー「カタラタス」へ飲みに行った時、そういえば帰りがけにこんな言葉をかけていただいた。 「イスタンブールのブルーモスクの近くにオメルさんって人がいて、もし会ったら私たちのこと言ってくれたら分かると思うから・・・」 「オメルさん? ホテルの人ですか? 絨毯屋さん?」 「絨毯屋さん」 でもまさか、これだけのやりとりで本当にその人に会うことがあるなんて、その時は全く思ってもいなかった。 偶然にも程があるよっ。 イスタンブルに到着したその日に、本当にそのオメルさん本人に会ってしまうなんて。 今回、小田蘭にはイスタンブルに到着後にすぐ済ませなくてはならないミッションを抱えていた。 というと大げさなのだけれど。 パムッカレからイスタンブルへ戻る移動の足を確保していなかったのだ。 当初の予定では、トルコ国鉄の夜行列車でパムッカレ近郊の街から出ている「パムッカレ急行」に乗る計画を立てていた。 ところが事前の情報収集段階でパムッカレ急行が運休しているということが分り、出発ギリギリまで待ってみたけれども運休が解消されたという話は入ってこなかった。 仕方がないのでイスタンブルで直接駅へ突撃してみようと思っていたのだ。 それでダメなら時間短縮とパムッカレでの滞在時間延長のため、飛行機に切り替えよう。 トルコ航空のwebサイトには現地価格でネット予約できる航空券もあるし、スルタンアフメットは旅行者が多く集まる地域だから飛行機のチケットも取れるだろう。 結果的にはシルケジ駅の窓口に行っても『その路線はストップしてるよ』と言われ、スルタンアフメットまで戻って飛行機チケットを探しているその時に偶然オメルさんと出会うことになる。 ブルーモスクの裏手を歩いていると、道端で日本人が数人集まってスイカを食べていた。 こんなに日本人ばっかり集まっているなんてなんだろう? そう思いながら通り過ぎようとすると、そこにいた日本語を話すトルコ人が声をかけてきた。 「どこへ行きますかー?」 観光地でよくある客引きかぁ・・・と思ってそのまま素通りしようと思ったのだけど、その後ろから日本人女性も「どこか探してるの?」と。 スルタンアフメットで日本語を話すトルコ人と日本人女性。 この組み合わせだけ聞くとすごくアヤシイ。 そういう客引きに捕まって絨毯屋さんに連れて行かれて、高いだけで品質の伴わない絨毯を買わされた話は至る所に転がっている。 でもまぁ、ヤバそうだったら途中で離れればいいんだし、本当に親切な人だっているんだから何でもかんでもシャットアウトしては失礼だぞ。 と、振り向いて訳を話してみると、その女性がこう言ったのだ。 「それだったらトルコ航空のサイトでネット予約した方が安いよ、ねぇオメルさん!」 オ、オメルさん?? 一瞬カタラタスで聞いた台詞がよみがえる。 オメルさんって、オメルさんってもしかして・・・。 その女性はお店のパソコンを使ってトルコ航空のサイトを出してくれ、ネット予約をさせてくれた。 これでパムッカレからの戻りの足も確保した。 いただいたチャイを飲みながら、先程から気になっていたオメルさんとカタラタスのことを切り出してみると、やはりここは渋谷で聞いたオメルさんのお店だった。 ネット予約をしてくれた女性はオメルさんの奥様だ。 そこで一気に盛り上がってしまった私たちは、その日の夕食を一緒に食べる約束をし、パムッカレから帰ってきた日も帰国の前日も、イスタンブル滞在4泊のうち3夜も食事を一緒にすることとなったのだった。 |
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