■シーワ


















カイロからバスで約11時間。
1週間〜10日程の短期旅行で砂漠に行くのは結構強行軍になってしまうけれど、話を聞く度に興味が高まるシーワ・オアシス。
夜行バスで行って1泊して、また夜行バスで移動すれば行けるよね。
と、今回のエジプト行きの目的地となりました。

「シーワは人がいいよー」と聞いていた通り、エジプトとは思えないくらい静かで落ち着いた良い町だった。
うるさい客引きもいない。
宿やレストランの人もしつこくない。
車を使ったとしても追加料金を請求してきたりもしない。
もっと行きやすかったら度々来たいのに、大都市からの交通の便が良くないからこそのシーワの雰囲気なんだろうとも思う小さな町。

到着して第一希望だった宿に行ってみると午前中なのに満室だと言われ、第二候補にしていた宿にチェックインしてそのままそこで各種ツアーのアレンジを聞いてみた。
こちらからの希望は4つ。

 ・砂漠泊は必要ないけど砂漠で星空が見たい。
 ・鉱泉や遺跡めぐりはロバ車に乗って観光したい。
 ・塩の湖に行きたい。
 ・夕日ポイントの湖に行きたい。

宿の部屋や屋上を見せてもらいながら1泊のチェックインと希望を伝えてツアーアレンジをお願いする。
やりたい事や行きたい所は多々あれど、シーワの滞在は1泊2日の夜行バス移動なので使える時間は今日と明日の2日間。
人数が集まれば混成ツアーになって料金も安くなるけれど、集まらないなら集まらないで私たち2人だけのプライベートツアーになる。
相談の結果、当日の夕方からさっそくジープで砂漠ツアーに出かけることになった。
そして翌日午前中にロバ車で遺跡と鉱泉めぐり、その夕方に塩の湖と夕日ポイント、という結構みっちりなスケジュール。

午前中にこれらを手配して、チェックインしてお昼ごはんを食べにたら少し休憩。
砂漠ツアーに出発する15時までは、夜行バスで一晩過ごして固まった体をベッドで伸ばしてお昼寝タイムだ。

砂漠ツアーを担当してくれたドライバーは物静かながら他の車が困っていると助けたりするようなベテランのオヤジさん。
砂漠に入ってあたたかい泉と冷たい泉を回り、以前はここが海だったことを伺わせる貝殻がたくさん埋まっている場所でも止まってくれて、砂丘の上で夕日を眺める。
食事はつけずにお茶だけにした私たちは、夕日が落ちた後は暗くなるまでシャイとピーナッツで休憩だ。
星空を満足するまで堪能した後で宿まで戻ってくれるのだけど、どこでも催促されずに好きなだけその場にいられたのはとてもよかった。

翌日は早朝に起きて宿の屋上でオリオン座を見ながら夜明けを待ち、日の出を見た後はシャーリー(旧市街)へ登ってシーワの町を見渡す。
シャーリーは小高い丘に泥レンガ作りの家が並んでいる昔の都市跡で、今でも少数の人が住んでいるというのだけどほぼ廃墟のようになっている。
入り口周辺にはレストランや土産物屋があり、私たちのような観光客がてっぺんまで登って行くのでそれなりに需要はあるのだろう。

さすがに朝が早かったので朝食を食べられるようなお店が開いてなくて途方にくれて彷徨っていたところ、宿の近くの角を曲がったあたりになにやら人だかりを発見。
それは当然気になるでしょう!
と、そちらに向かってみれば、どうやらパン屋だ。
できたてのエジプト・パン「アエーシ」が出てくる所に男たちが群がり、隣ではターメイヤ(ソラマメのコロッケ)やナスを揚げていて、それだけを買っていく人もいればアエーシに挟んでピタパンサンドにしてもらっている人もいた。

これだ!!

こういう地方では町中で女性の姿を見かけることはほとんどない。
朝の買い物も男たちの仕事なのか、男性ばかりでごった返している所に突っ込んでいって、指差しでアエーシにターメイヤとナスを挟んでもらって朝食の調達完了!
これを部屋に持ち帰っていただきます。

朝食を済ませたら、この日はロバ車で観光に出かける。
ロバの引く屋根付きの台車に乗ってガタゴトとゆっくり移動していくのはのんびりとしたこの風景に合っていて気持ちがよかった。
ガバル・イル・マウター、アムン神殿、オンムル・イルバイダ、クレオパトラ鉱泉。
クレオパトラ鉱泉の側にあるレストランで風に吹かれてまったりしている時間がなんとも言えず…。
先客グループが一組いたけれど、入ったお店が違ったのでその声も背景にのんびりしてしまう。
ある程度の音量の人の声は心地よいBGMになる。
ロバ車ドライバーとレストランの人は友達同士だったようだけれど、だからと言って何かを買えという雰囲気もなく、シャイとレモネードを頼んでテーブルで日記やエアメイルを書きながら小一時間ばかり過ごした時間は至福のひとときだった。
ロバ車ドライバーもレストランの人とビリヤードやったりしていてね。
このゆるーい雰囲気がなんとも言えず、シーワで一番いい時間だったかもしれません。

夕方からは水の蒸発による塩分濃度の高い湖へ寄ってから夕日ポイントの通称ファンタジーアイランドと呼ばれる場所へ。
塩湖は夏だったらもっと水も蒸発しているらしいのだけど、暑さのピークを終えていた10月はそこまで白い塩が見える状態ではなかった。
昨日は砂漠に沈む夕日を眺め、この日は湖に沈む夕日を眺める。
普段はゆっくりと太陽を眺める時間も場所もあまりなく、太陽の沈む場所もビルの間で気がつくと暗くなっているという日常を思うとそれだけで贅沢な時間だ。

この時期は観光のオフシーズンなのか町中で営業しているレストランがどうも少なくて、いつも食べていたのは宿から通りを挟んで正面にあるレストランだった。
まぁそれなりに美味しかったから良かったのだけれど、ビックリしたのがこのレストランの奥にあるレジカウンターやドリンクの冷蔵庫にカイロに戻ったら泊る予定の Dina Hotel のステッカーが貼ってあったのだ。
カイロから遠く離れた砂漠のオアシス都市で、カイロにある多数のホテルのなかからピンポイントで Dina Hotel !
いやぁ、ビックリした。
何か関係があるのかな。

そして続いてのビックリは、夜になるとその通りの真ん中に椅子が並んでシーシャをふかす男たち。
てか! 道のど真ん中だよ!!
中央分離帯がシーシャ帯(笑)。


last update / 2013.01.03