■夜行バス
















シーワオアシスへの定期的な公共交通手段はバスで、ルートはいくつかあるが旅行者にとって利用しやすい大都市からの直行便は大きく2つ。
カイロからとアレクサンドリアから、どちらも10時間前後のバス旅だ。
私たちはカイロからの夜行バスを使ってシーワへ入り、シーワで1泊した後、再び夜行バスでアレクサンドリアへ向かおうとしていた。

カイロからの出発はトルゴマーンのバスターミナル。
前日にチケットを購入し、当日は出発時間の21時15分に間に合うようにカイロ市内の渋滞やタクシーがなかなかつかまらないことも考えて19時半には荷物をまとめて宿泊ホテルを出発したところ…。
予想外にあっという間にメータータクシーがつかまり、渋滞もなく20時にはトルゴマーンに到着してしまった。
バスターミナルの建物は本当に営業しているのかと疑いたくなるほどの暗さだ。
建物の入り口にあるセキュリティチェックを通過して中に入ると、チケット窓口の周辺にかすかに灯りがついているのみでフロアは全体的に薄暗い。
フードコートや各種店舗があるという表記だけはあるが、営業している店舗は少なかった。
閑散として薄暗い建物の中を地下にある出発フロアへ進む。
どこ行きのバスがどこから出るのか、そういう表示もまったく見当たらない。
チケット窓口の上に電光掲示板はあるのだけれど、こちらにもまったく表示がない。
アラビア語で読めないとかいう問題ではなく、表示自体がないのだ。
チケットを買いに来たのも日が暮れる頃だったので日中の状況は分からないけれど、エスカレーターも動いていないやる気のまったく感じられないバスターミナルだった。
地下に降りて人が集まっているあたりで係員に確認すると自分たちが乗るバスの場所は分かったけれど、長距離バスのターミナルでここまでやる気のない…というか活気がないのもなかなか珍しいんじゃなかろうか。
そして案の定出発は遅れ、21時15分出発の予定が22時近くなってやっと発車だ。
まぁ遅れるのは想定内だったけどね(笑)。

車内の寒さ対策で持ってきた上着を羽織るとさっそく寝に入るワタシたち。
飛行機だろうが船だろうがバスだろうが、どこでも眠れるワタシたちは本当に旅向きだと思う。
途中2〜3回の休憩を経て、バスは9時前にシーワオアシスへ到着した。
カイロでバスに乗り込んでから約12時間。
いいかげん体はバキバキに固まってきた。
まぁしかし、休憩でトイレに降りて体を動かしたりした以外はひたすら眠っていたので睡眠だけはバッチリだ。

ここまでは特に何の問題もなかった。
出発が遅れるなんてことはこういう旅行をしていれば日常茶飯事だし、宿の予約もしていないのでその点も気楽だ。

問題が起こったのは翌日だった。
その日の夜行バスのチケットを取ろうとロバ車で観光に出かける前にバスターミナルに寄ってもらった所、窓口はクローズ。
バスの発着の時しか窓口も開いていないのだという。
宿の兄ちゃんに話をしていたので気を使った彼がロバ車ドライバーに携帯電話をかけてきてチケットは取れたかと確認してくれた。
『窓口が閉まっていて買えなかったよ。お願いしていい?』
と、チケット手配をお願いしてみたのだけれど、観光から戻ってきてもやはりチケットは取れていなかった。
夕日観光も終えて後は夜行バスの時間を待つのみという頃になって確認してくれた宿の兄ちゃんから衝撃の事実が発覚。

『アレクサンドリア行きは今日はないって』

って、えええええーーーっ?!
『いやいやいや、アレクサンドリア行きがないってどういうこと?』
タイムスケジュールでは1日1便22時にアレックス行きがあるって窓口にも書いてあったじゃん!
カイロ在住の旅友とアレクサンドリアで待ち合わせをしているのに!!

人づてだとよく分からないので、直接自分たちでバスターミナルへ出向く。
某ガイドブックでは中心地の地図外にバスターミナルがあると書いてあったので遠いのかと思いきや、中心地から徒歩5分程で簡単に歩いて行けてしまうので手配も楽だ。

果たして。
18時半頃に直接出向いて窓口で確認した所、やっぱりこの日のアレクサンドリア行きはなくなっていた。

ちょっとーーーーー。
『なんでないんだ』
『私たちはアレクサンドリアに行きたいんだ!』

と詰め寄っても、窓口の中にいるおっちゃんは理由も言わずに同じことを繰り返すばかりだ。
曰く、
『今日はアレクサンドリア行きはない』
『カイロ行きが22時にある』
『22時のカイロ行きはスペシャルだぞ』


いや…。
その22時の便って本来アレクサンドリア行きでしょ?

なんだっつーの、もう。。。。。

途中で乗り継いで行けばアレクサンドリアに行けないこともないのだけれど、アラビア語も分からないのに夜行バスで真夜中にローカルな見知らぬバスターミナルでの乗り換えは難しいよ。
そもそもアレクサンドリア行きは1日1便、22時のみだ。
それがなくなってしまったならカイロに戻るしかない。
カイロに行くしかないのなら、本来の20時発に乗って少しでも早くカイロに戻りたい所だった。
しかし窓口のおっちゃんは
『スペシャルだ』『スペシャルだ』と言って22時のバスしか勧めてこない。
20時のバスはもう売り切れなのか?
もう、しょうがないなー。

選択肢がそれしかないので22時発のカイロ行きのチケットを買って、とりあえず夜ごはんを食べて荷物を預かってもらっている宿に戻って時間までぼんやり過ごすことになった。
そうして、カイロにいる旅友から借りてきていた現地の携帯電話でアレクサンドリア合流予定の旅友おろちゃんと話をする。
おろちゃんもビックリのカイロ戻りとなってしまったけれど、カイロで合流して列車でアレクサンドリアへ向かうこととなったのでありました。

そうして再び夜行バス。
今度は時間ピッタリに出発して、カイロ市内に入ったらバスを乗り換えて到着したのはタハリール。
タハリール広場といえば2011年の初めにエジプトの民主化運動で大勢の人が集まっていた革命の象徴ともいえる場所じゃないですか。
日本でもニュースが流れていたので知っている人も多いかと思うけれど、しかしこの時のタハリールはなんとも平和なものだった。
以前シーワからカイロへ夜行バスで戻ったおろちゃんから、
「シーワからカイロに来た時はタハリールで降ろされたから…」と聞いていたのでカイロ市内に入って止まったバスの中で係の人らしいおっちゃんが『タハリールか?』と聞いてきた時も戸惑わずに対応できたのが有難く、乗り換えたバスは考古学博物館の裏手辺りで止まってそこが終着。
全員バスを降ろされて、私たちはサダト駅からメトロに乗ってアレクサンドリア行きの列車が出るAl shohadaa(旧ムバラク)駅へと移動しておろちゃんと合流、列車でアレクサンドリアへと向かったのでした。

いやー、しかしこの日は移動が…(笑)。
GPSの記録を見ると、すごいもったいない移動だったと思うわー(笑)。


last update / 2013.01.03