キューバにはいろんな種類のタクシーが走っていて、見ているだけでもおもしろい。 何といっても素晴らしいのは、そこら辺を普通に走っているクラシックカーがタクシーとしても使われていること。 塗装が剥げたり塗りの荒い補修をされたボロボロのクラシックカーが、フロントガラスに「taxi」ステッカーのようなものを貼って走っている。 中東でもよくあるけれど、こういう地元の人の足になっているタクシーは基本的に乗り合いだ。 自分が行きたい方向に向かって走っているタクシーを見つけ、まだ人が乗れるようなら運転手に行きたい場所を告げ、既に乗っている人達と方向が合えば乗せてもらう。 乗り合った人達や運転手と気軽に話しながら、目的の場所の近くまで来たら降りる。 または乗り継いでいく。 行きたい方向を向いて走っていても、聞いてみると目的地から離れている所へ向かう車だった場合は次の車を探す。 バスのように決まったルートを走っている訳ではないから小回りが利いて使い勝手はとてもいいのだけれど、その国の言葉と地理が分からないと使いこなすことは結構難しくて、観光客でも乗れないことはないけどなかなか乗る機会はないんだよね。 それでもキューバのクラシックカーに一度は乗ってみたい。 空港や宿でタクシーを頼むとピカピカの今時の車がやってくるから、乗るなら路上で捕まえないとね。 ゆうこさんと小田蘭は帰国便が早朝5時とか7時だから宿を出るのが3時頃で、さすがにその時間に路上で流しのタクシーを捕まえることは難しいから、機会があるとすれば先に帰るみずえさんの時か。 午前中、10時頃に宿を出発するみずえさんを見送るべく私たちも一緒に外へ出た。 するとタイミングよく旧市街方面から走ってくるボロボロのクラシックカーtaxiがいた。 うまいことに乗客も1人だ。 この1人の乗客が空港へ行くルート上で降りるのであれば乗せてくれるかも! タクシーを止め、既に南米滞在2年を超えてスペイン語を不自由なく話せるゆうこさんとみずえさんがドライバーと交渉を始めた。 なんと頼もしい。 交渉はあっさり成立して、12cuc(約1200円)で空港まで行ってくれることになった。 乗っていた青年は降ろされ(自主的に降りて?)次のタクシーを探しはじめ、乗客はみずえさん1人だけとなった。 通常、空港からハバナ旧市街までは25cuc(約2500円)が相場で、旧市街から空港に行くタクシー代も同じようなものだ。 地元の人達が常用しているクラシックカー・タクシーなら相場より安い金額でもこの1回で数日分以上の稼ぎになるんだろう。 そりゃあ乗ってる人を降ろしてでも空港までの観光客を乗せたくなるのも当たり前だわ。 他の国ではもはや珍しいクラシックカーに乗って空港まで相場の半分の金額で行けるのは嬉しい。 クラシックカーは当然中身もそれなりにガタがきているので乗り心地はあまりよくないというけれど、空港までの30分程度ならそれほど問題はないもんね。 私たちも3時の出発じゃなければなぁ。。。 私たちは時間が時間だったので、あらかじめ宿の人にタクシーの予約を頼んでいたら、まだまだ真っ暗な午前3時に宿の前で待っていたのは黄色と黒のタクシーだった。 当然、空港までの金額は25cuc(約2500円)。 ちぇ。 この時間だから仕方ないとはいえ、ちょっとつまんないなぁ。 でもこの黄色と黒のタクシーはまだ乗ったことなかったから、まぁいっか。 そして、ハバナやトリニダーやバラデロ等、観光客のいる所でよく見かけるのは黄色くて丸いフォルムのココタクシー。 所謂オート三輪で、こちらは主に観光客を相手にする。 小回りが利くので路地を縫って走って行くこともあるけれど、一度3人で乗った時は途中で何かを踏んだのかタイヤがパンクしてその場で修理が始まったことがある。 いきなり路地の途中で止まるから何かと思ったらパンク。 で、予備を持っているから自分でサクっと替えちゃう。 その間私たちは修理を見物(笑)。 これもいいネタだわ。 小田蘭がキューバに到着した時に空港から乗ったのは普通のワゴン車で、まぁ、いわゆる白タクなのかもしれない。 税関を抜けて出迎えの人達が大勢待っている所に出たとたんにさっそく「タクシー?」と声をかけられた。 いきなりかい! いやいや、私まだ両替もしてないから何もできないよ。 『そうかそうか、両替はあそこだよ』 両替できるブースはすぐ近くにあった。 キューバはクレジットカードが使える所が限られているようだし、手数料も結構かかるというし、明日はさっそく移動日だし、いつもより多めに両替しておかなくちゃ。 両替を終えて金額も確認して、さてとぐるりと周りを見回すと先ほど声をかけてきたおっちゃんが手を振っている。 うーん、まぁ行ってみるか。 果たして、声をかけてきた彼の所に戻ると荷物を持って側の階段を指してこっちだと案内される。 階段で1つ上の階に上がり、そのまま建物から出て行こうとする所にストップをかけて金額を確認する。 えーと、空港から旧市街までの相場はcuc25(約2500円)だっけ。 行き先を聞かれたので用意してきた地図と住所を差し出すと、相場通りの25cucだという。 うん、問題なさそうかな。 おっちゃんは受け取った荷物を転がしながら2Fの出口から空港の建物を出ると右に向かって歩き出し、駐車場はあっちだからと指し示す。 あー、やっぱり正規タクシーじゃないのか。 うーん、うーん、大丈夫かなぁ。 まぁここまで来たら行くしかないか。 警戒は怠らず、最悪ヤバそうだったら途中で逃げよう。 街灯はあるけれど建物から離れるにつれて薄暗くなっていく道を少し下ると、右斜め前方に何台かの車が止まっている一角が見えた。 駐車場というよりロータリーのようになっている。 下り坂の途中から駐車場に向かって斜面を下に降りる階段があり、おっちゃんは荷物を持ちながらサクサクと降りて行く。 降りると荷物を置いて、『あれが僕の車だよ』とロータリーの向かいに止まっていたワゴン車を指す。 『移動させてくるからここで待ってて』 と、言って車に向かって行った。 見回すと空港から戻ってくる人を待っているのか止まっている他の車にも何人かの人が待っている様子が見て取れた。 ヤバイ空気は感じないけど、やっぱり初めての場所で深夜は結構不安があるよねぇ。 車がやってくると、助手席には女性が乗っていた。 む?! 女性もいると安心させる手口か? 思わず警戒してしまったけれど、おっちゃんは運転席から降りるとこちらの荷物を後部座席に乗せながら『僕の奥さんだ』と紹介した。 まぁ警戒は怠らないとして、とりあえず乗り込むと窓を開けて彼らと世間話をしてお互いの名前を確認する。 何かで名前を確認して呼び合うと親しみが湧くので悪いこともしにくくなると読んだことがある。 おっちゃんの名前を確認して、奥さんの名前も聞いて、彼らの家族構成まで話を聞きながら走る車の周囲は常に確認だ。 まぁ、空港近くってどこもあんまり何もないし、深夜で暗いからよく分からないんだけどさ。 聞くとどうやら彼らには娘がいて、ハバナの大学で日本語を勉強しているらしい。 日本語弁論大会でのスピーチを録音したものをiPhoneで聞かせてくれた。 あー。なんか本当に普通の人っぽいわ。 誰かを送った帰りか近くまで来たついでに空港で誰かを捕まえて戻れば兌換ペソも手に入るしお得だね、って感じかなぁ。 25cucって人民ペソで生活している人にしたら結構大きな金額だもんね。 それでも警戒だけは最後まで怠らず…っと。 車は徐々に人の行き来のある町中へ入っていく。 23時近い夜中でも女性が歩いているってことは、やっぱりキューバの治安は結構いいのね。 古い建物が立ち並ぶ路地を通っている間にも夜遅い時間だというのにそこここに人の姿がある。 こちらが渡した地図と住所の紙を見て、時々周りの人に確認しながら進んでいくと、インターネットで見たレンガ色の扉の前におばちゃん達が数人座って談笑していた。 あ、ここかも! 車が近付いて行くと、談笑していたおばちゃんの1人がこちらに気づいて声をかけてきた。 『日本人かい?』 「シ(スペイン語でYesの意味)」 『それならウチだよ。友達が待ってる』 「ユウコ?」 『そうそう。よく来たね』 無事に到着。 あぁ、良かった! 最初は25cucということだったけれど、両替したてでピッタリの金額がなく、お釣りもないようだったので安心料も含めて30cucをおっちゃんに支払う。 飛行機が遅れたこともあり、時間は既に23時を超えていた。 last update / 2013.06.03 |
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