07■コルドバ








バルセロナからAVEに乗って約5時間。
南スペインはアンダルシア地方第3の都市コルドバへやってきた。
昼過ぎに到着したので、まずはホテルにチェックインした後で昼食を食べに出かける。
こちらの昼食時間はラテン系の国によく見れられる14時〜16時くらいが平均で、ゆっくり時間をかけて食事をする。
チェックインした後で外へでるとちょうどこちらの昼食時間になっていた。
のんびりと周辺を歩きながら昼食の場所を選んでみよう。

しかし、よほどせっぱつまっていない限りすんなり目的地に辿り着けないのが小田蘭だ。

あ、その路地いい感じ!
ちょっとこっち曲がってみようかな。
このお店のぞいてみるー♪
あれ? この辺りなんか違うなぁ。
ふんふん、ここでフラメンコの予約ができるのね、後で来るとして、今はちょっと様子見…。

等々、お昼を食べる場所を決めるのに時間がかかってしまった。

この日は突き抜けるほどの空の青さがまぶしくて、とてもいい天気だった。
青い空にオレンジの樹が映えている。
南スペインは特にオレンジの樹が多いようで、街路樹からメスキータの中庭まで、至る所で緑の葉とオレンジ色の実を目にすることができる。
樹の下にはオレンジの実が落ちていたりもして、メスキータの側にある塔を囲う鉄柵には誰がやったのかオレンジの実がいくつもささっていた。
中には鉄柵に刺さったオレンジに顔が描かれていたものも…。

メスキータの側にあるインフォメーションと、旧市街の外壁の外にあるインフォメーションの付近にはそれぞれ観光用に馬車がいくつか溜まっている。
旧市街の石畳の道を馬車が走る音や姿がメスキータの石造りの背景にマッチしていてとてもいい雰囲気だ。

この日はゆっくりしようと決めて、ぶらぶらと旧市街を歩いて夕方にはミラフローレス橋の方まで行ってみた。
ここは車も行きかう大きな橋で、そこからメスキータの側にあるローマ橋の方を見ると、ちょうど夕焼けの時間で綺麗なオレンジ色の光が広がっていた。
オレンジの実に、夕陽のオレンジ色。
小田蘭の中でコルドバの印象がオレンジ色になった。

コルドバは2016年の欧州文化中心地の候補地になっていて、あちらこちらで「CORDOBA 2016」の文字を見かける。
ローマ橋付近の河原には背の低い緑でその文字が模られ、ミラフローレス橋からは通りの建物に垂れ幕が下がっていた。
夕陽を写真に収めながらぐるりと見回していると、大きなスーツケースを持った4人が目に入ってきた。
そのうち2人は黄色い表紙のガイドブックを手にした日本人だ。
日本人の若い男女、スカーフを被った中東系の女性と、やはり中東系の男性。
4人で何かを探している風ではあるが、周りは車が通るばかりで歩いている人がほとんどいない。
タイミングよく通りがかったこちらの男性が気にして声をかけてくれたようだが、どうもお互い通じていないようなので小田蘭も声をかけに行く。
日本人なら日本語でOKでしょう。

「何か探してるんですか?」
ん? これはいつぞやトルコでスージーさんに声をかけられた時の私?
2008年の夏にイスタンブルの旧市街を歩いていて声をかけられたことを思い出した。

声をかけられた方の日本人は日本語が聞こえたことにびっくりした様子だ。
そうだよね、こんな町の外でいきなり日本語聞こえたらビックリするよね。
メスキータ方面に行きたいこということなので、案内をしながら一緒に向かうことにする。
小田蘭の泊っているホテルもメスキータの近くだ。

歩きながら話をすると、グラナダからバスでやってきたのだがいきなりこんな所で降ろされて自分がどこにいるのかも分からずに一緒に降ろされた4人で困惑していたのだという。
日本人の2人はカップルではなく、グラナダからのバスで偶然一緒になった人なのだそうだ。
「在住の方ですか?」
と言われたのは、荷物はすべて同行者の残る宿に置いて、パンツのポケットに小銭、上着のポケットにコンデジで手には何も持たず、キャスケットを被っただけの身軽な格好だったからだろう。

いや、そんな…。
到着日早々我が物顔で歩いていた訳では……。