出発前
トルコという国は、私の中でずっと特別な存在だった。アジアとヨーロッパの大陸をまたいで存在するという地理的なものにも魅力を感じ、モスクから流れるアザーンの声も自分の耳で感じてみたかった。
明細(一部抜粋) TL 円貨 AF:マイレージ無料往復航空券
(成田⇔パリ⇔イスタンブル)- -
そんなに気になるなら行けばさっさと行けばいいじゃないか、と言われそうだけど、やはりこういうものには時期がある。良く言われる言葉だけれど、旅には向こうから呼ばれる時があるのだ。何にどう呼ばれるのかは分からない。だけど、きっと、1999年の夏に私はトルコに呼ばれたのだ。
しかしその夏、トルコは大地震に見舞われた。こんな時に行ってもいいものかと悩んだけれど、情報収集をしていくうちに「観光客が来なくなり観光収入が減ることが問題だ、行ける人は邪魔をしないよう行ける場所に行ってあげてほしい」という話に背中を押され、インターネットで予約をしたホテルの人にも「来てくれるのを楽しみにしているから」とのメールを貰い、そのままの計画で行く事にした。
そんな夏の終わりのトルコ一人旅のお話。
イスタンブルに到着したのは23:30。
真夜中の、知らない街の知らない空港。乗り継ぎでパリから飛んできた私の周りに日本人は見当たらない。更に時間的なものも加わって心細さと好奇心が入り交じった不思議な感覚に包まれる。
出口を抜けるとこの時間でも出迎えの人が多い。到着が真夜中になるのは分かっていたし、この時間からまったく知らない街に出て行くのはとても不安。ということで予めホテルの送迎サービスをお願いしていた。ホテルの名前と私の名前を書いた紙を持っているから、というメールを頼りに当たりを見まわす・・・。あっ、いたっ!
なんだか少しほっとして、挨拶を交わして車に乗り込んだ。
明細(一部抜粋) | TL | 円貨 |
枕銭 | US$1.00 | 115 |
地下宮殿(入場料) | 1,250,000 | 302 |
アヤソフィア(入場料) | 2,000,000 | 483 |
絨毯キリム博物館(入場料) | 1,000,000 | 241 |
絵葉書5枚(アヤソフィア内) | 200,000 | 48 |
夕食(2人分) | 8,350,000 | 2,012 |
初日の朝はアザーンの声で目が覚めるものだと思っていた。1日5回、イスラム圏では祈りの呼びかけであるアザーンが鳴り響く。私はこれをとても楽しみにしていたのだ。早朝の祈りは5:00だか6:00だか・・・。昨日の夜は遅かったし、外からの音なんて気づかずに眠り込んでいたのだなぁ。期待していただけに、なんだか肩透かしをくらった気分。目が覚めたら7:00だった。
ホテルで朝食を取りながら一応の行動予定を考えてみる。そういえば到着が深夜だったから、まだ両替もしていないんだっけ。とりあえず両替。そして一旦ホテルに戻ってお金を小分けにしてから本格的に街歩きしよう。
そう思って出かけると、出かけたとたんにさっそくあちこちから声がかかる。さすが旧市街。客引きなんだかなんなんだか・・・。「いらないよ」と手を振ってかわしながら両替を済ませて戻ってくると、ホテルの入口で日本人の女性と男性にすれ違う。残念ながら本日は既に満室で、昨日まで泊まっていた女性はチェックアウト、宿を求めて来た男性は別のホテルを紹介してもらっているようだ。
鍵を受け取り、昨夜遅くて書いていなかった宿泊カードを記入する。その後ホテルの紹介を受けていた男性と、日本語を話す従業員に誘われてホテルにある絨毯部屋に招いてもらった。チャイを飲みながらオーナーのA氏とちょうど宿泊中の小田さんも加わっての絨毯講義。その部屋は絨毯だけではなく、Aさんが旅して手にいれてきたものやお気に入りがぎっしりと詰まっている宝箱のような部屋だった。明かり取りの天窓から射し込む陽射しと、子供の隠れ家にでもなりそうな屋根裏部屋の雰囲気を感じる居心地の良い空間。
ここでのんびりと午後まで過ごして、カッパドキアのツアーを申し込んでから街歩き。まずはホテルのある通りを歩いて地下宮殿へ行ってみよう。旧市街の名所はこの辺りに固まっているのでとても便利だ。
そして次はアヤソフィア。2Fもぐるりと回って通路を降りていると、あれ? この人知ってる・・・。お互い「あれ?」という顔をして立ち止まると、朝ホテルをチェックアウトしていった彼女であった。
「あの・・・もしかして朝ホテルで・・・?」「あっ! やっぱりそうですよね。私も何処かで・・・と思ったんですよ」「うわー、偶然ですねぇ。チェックアウトしてどこかへ行かれたんじゃないんですか?」「いえ、本当はもっとあそこにいたかったんですけど、今日は予約で満室だからって言われて別のホテルを紹介してもらったんですよ」「じゃあまだイスタンブルに?」「明日の夜行バスでマルマリスへ戻るんです」「そうなんですかー。あ、じゃあ、もしよかったら今日の夜ごはんご一緒しません?」「もちろん! 私もそれ考えてました」「それじゃあ・・・えーっと、18:30にホテルのロビーで、とかって大丈夫です?」「分かりました。じゃあ行きますね」
一人旅の何が問題かって、私の場合は食事を一人で食べるのがちょっと寂しい。嬉しい偶然に感謝しつつ、彼女と分かれてブルーモスクへ。
この辺りは観光客が多い場所である。見所が固まっているのだから当然なのだけれど、観光客が多ければ客引きも多くなる訳で。アヤソフィアからブルーモスクへ向かう間にもひっきりなしに声がかかるのが鬱陶しい。
「ニホンジンですか?」これはまだいい。
「アンニョンハセヨ」まぁ、東洋人は見分け付かないこともあるからね。
「ヘイ、イタリアン?」・・・私のどこがイタリア人に見えるんだ〜?! 茶髪だから? ちょっとパーマかかってるから? サングラスして目が見えないから〜?
しつこく一緒に歩いて付いて来る人もいて、欧米人観光客に「タイヘンね、早く行かないと」と日本語で気遣ってもらってしまうとは(笑)。
とりあえず振り切って中へ入ると静謐な雰囲気と風通しの良さが気持良い。・・・でも。こんな中でも商売すなーっ! パンフレット見せられても皮のジャケットなんか買わん!
絨毯キリム博物館に入れば係員から誘いを掛けられ・・・。いや、あのね、いくらここがもうすぐ終わるからって、あんたとお茶する気はないってば! 展示品の説明してくれるのは有り難いんだけどさぁ・・・。
外に出れば制服を着た警察官だか警備員だかにも声を掛けられ。お土産屋に連れてこられてもー・・・。
お土産屋の兄さんにはトルコ式挨拶(お互いの頬にキスをする)を迫られ・・・。やめろ〜!
ポスフォラスを見ようとエミノニュまで歩いていると「何か落ちました」って、そんな手にかかるかい! 無視無視。「あなたシツレイね」・・・おまえの方が失礼じゃ〜!
エミノニュからの帰りもおじさんに声を掛けられ付いてこられ・・・。マックでお茶〜? いや結構です! お菓子くれるって? 子供じゃないんだから・・・(笑)。私はこの後友達とホテルで待ち合わせしてるの! え? 挨拶? ぱすっ! さよ〜なら〜〜。
はぁはぁ・・・。外歩くだけでなんでこんなに疲れるんだ。
明細(一部抜粋) | TL | 円貨 |
枕銭 | 400,000 | 97 |
サバサンド | 500,000 | 121 |
コーラ(マクドナルド) | 350,000 | 84 |
ガラタ塔(入場料) | 1,000,000 | 241 |
エアメイル(日本まで1通) | 250,000 | 60 |
トイレチップ | 100,000 | 24 |
早朝のまどろみの中で微かにアザーンを聞いた。ああ、トルコなんだなぁ、と思いながらまた眠りに落ちる。
朝食はお皿にたっぷりパンとチーズに果物を盛り付けて、階段を登って中庭に移動する。昼間に比べて朝の空気は少し涼しい。青い空を見上げながらゆっくり時間をかけて食べる朝食はなんだかとっても贅沢だ。
今日の夜にはカッパドキアへ移動する。ひとまずチェックアウト、3日後に戻ってくるので支払いはその時でいいそうだ。荷物を預かってもらい、昼間は今日も街歩き。
さぁ、どこを歩こう。昨日は旧市街だったから、今日は新市街へ足を運んでみようか。
金角湾に渡されたガラタ橋。旧市街側にはエジプシャン・バザールがある。グランド・バザールよりは庶民的だと言うけれど、それでもやっぱり観光客には至る所で声がかかる。交渉事は苦手でも市場やバザールの中を歩いているのは大好きだ。そのうちの一軒の店先では、日本人の若者2人が店員と談笑中。日本人のお兄ちゃんズ何買ってんだろ、と思って通り過ぎようとしたところへ目ざとくこちらを見付けた店員が「安いよー」と声を掛けてくる。うわ、さすが商売熱心〜。それにつられて「どんな感じですか?」とお兄ちゃんズに声を掛け、一緒にまじってチャイを貰って話しこむ。うん、エルマ・チャイもね、お土産には欲しいと思うんだけど、今日はこれからカッパドキアへ移動するから今からあんまり荷物増やしたくないのね〜。またイスタンブルに戻ってくるからその時に買いに来るよ。
エミノニュでサバサンドを食べて橋を渡って新市街へ。ガラタ・タワーへ登りたい、と地図も広げずアタリをつけて歩いていたら全然違う方向へ向かってしまったらしい。このモスク、勝利のモスクだ。間違えたっ、と来た道を戻っているとアザーンが響いてくる。するとどこからともなくモスクへ向かう人波と逆流することになってしまうのだ。
やっとなんとか辿り付いたガラタ塔。塔の周りをぐるりと歩ける展望台は人がすれ違える程の幅しかなく、手すりにもたれてひたすらのんびりぼーっとする。ごちゃごちゃとした街並みを上から見下ろし、ボスフォラスと金角湾を眺め、何も考えずに過ごすのは実はとっても好きかもしれない。「何してたの?」と聞かれても「んー? 何もしてないよー」という時間が一人で旅に出ると多い気がするのだ。
ホテルに戻るとロビーで寛いでいたWさん、Nさん、Sさんに混じって雑談に興じる。特にSさんはコンヤでキリム織りの勉強をしているというし、これから乗る夜行バスについての話もいろいろと聞くことができて助かったのだった。
「だいたい一晩乗ってると途中で2回くらい休憩で止まるからね、その時に軽く食べたりトイレ済ませたりするのよ」「長距離移動の時のトイレって、結構気を使いますよね」「そうそう。生活してる身ではトイレチップもバカに出来ないから、時間見計らって“ん、ここで行っておけば後もう平気かな”とか考えたりしてねー」「えっ? トイレチップ、いるんですか?」「ええ、バス休憩所とかモスクとかのトイレは必要よ」「しっ…知らなかった〜〜。あ、ちなみに幾らくらい渡すもんなんですか?」「金額は入口に書いてあるから、それ見てそこにいる人に渡せば大丈夫。お釣りも返してくれるけど、あんまり大きいとつり銭ない場合があるから、やっぱり小額を用意しておいた方がいいわよね。場所によって金額も違うから、安い所で済ませたいのよね〜(笑)」「そうなのかー。トルコにもトイレチップが必要だなんて・・・。聞けてよかった〜」
19:00に申し込みをした旅行社から小型のバスに乗り込んでオトガル(バス・ターミナル)へ移動。ここから20:30出発の長距離夜行バスで一晩かけてカッパドキア地方へと向かう。
明細(一部抜粋) | TL | 円貨 |
ツアー代 (移動・宿泊・食事・各入場料・込み) |
US$160.00 | 18,400 |
参考:デリンクユ地下都市 | 1,000,000 | 241 |
2度の休憩を挟んで一晩中走りつづけたバスは、まだ夜が明けきらない頃に停車した。バスターミナルというにはとても小さく、こんな時間にまた休憩でもないだろうに・・・と思っていたら、どうやらここでバスを乗り継ぐようだ。
カッパドキア地方と言ってもいくつもの街があり、それぞれの目的に応じて拠点とする街を選べばいいのだけれど、私が申し込みをしたのはユルギュップのホテルだった。そこの旅行会社の人によると、ネブシェヒルでカッパドキア地方を巡回しているシャトルバスのようなものに乗り換えてユルギュップまで行けば出迎えの人がいるということである。ふむ。ではここからそのバスに乗り継ぐのだな。
イスタンブルからの夜行バスには、ホテル違いで同じツアーに申し込みをしたらしい日本人男性も乗っていた。バックパッカーな彼はシベリア鉄道を通ってトルコまで来たという。バスが止まっても寝つづけていたその人に声を掛けて小型のバンに乗りこむ。早朝のカッパドキアはイスタンブルより大分寒い。パーカーに付いていたフリースを持ってきて正解だったな。
乗り換えた車は乗客の求めに応じ、角々で人を降ろしながら進んで行く。私達が降りるのはユルギュップのバスターミナルだ。近くなれば何か書いてあるだろうしアナウンスもあるだろう、と注意深く外を眺めていたら、同じツアーのその人が「次、降りるみたいですよ」と周りのトルコ人に言われて声を掛けてくれた。あ、そうなんだー、と降りてみたけど・・・ちょっと、ここって看板に「Goreme」って書いてある!
慌てて周りの人に確認すると、ユルギュップは次のバスストップだって言うじゃないの! ちょっと兄ちゃん〜〜! こんな所で降りちゃってどうすんの〜〜。
近くにいたタクシーを捕まえて、急いでバスを追いかける。追いつけば再び乗せてもらい、追いつけなかったらそのままユルギュップのバスターミナルまで行ってもらおう。あああ〜〜。まいった、まいった。降りる時に確認すれば良かった、と思っても今更仕方ないのである。なんとか途中でバスに追いつき、皆の注目の中再度乗車(笑)。そして今度は本当に、ユルギュップで下車するのだ。
到着した私達を出迎えてくれたのは、申し込みをした旅行会社のユルギュップ店の人達である。まずは宿泊先のホテルにチェックイン。一息付いた頃に小型のバンが迎えに来て、これから1日、カッパドキア地方を回るのだ。
本日のコースは「デリンクユ地下都市」「ウフララ渓谷」「ソーアンル」「ケルヴァン・サライ」。さすがに夜行で到着してそのまま丸1日の観光に出発するのはなかなかハードなスケジュールだったなぁ。夕方ホテルに帰り付いたら夕食の時間まで仮眠を取って、食べたらまたすぐぐ〜っすり。やっぱりね、しっかり横になって眠れるのが一番嬉しい。明日の夜もまた夜行バスで移動だし、眠れる時にしっかり寝なきゃ旅行中は体が持たないよ。あ〜、私ってばどこでもぐっすり眠れる人で良かったわ〜。
明細(一部抜粋) | TL | 円貨 |
参考:ゼルヴェ野外博物館 | 1,200,000 | 290 |
参考:ギョレメ野外博物館 | 1,500,000 | 362 |
中型ナザール・ボンジューウ×4 | 1,000,000 | 241 |
夕食 | 800,000 | 193 |
トイレチップ | 50,000 | 12 |
本日もカッパドキア観光。「ゼルヴェ野外博物館」「ギョレメ野外博物館」は、これを見なきゃカッパドキアまで来た意味がないでしょう! という、沢山の奇岩。駱駝の形した岩とか、キノコのような形をした岩とか、自然の造形美ってすごい。
そして本日のメンバーは、昨日と同じなのは私とバックパッカーお兄ちゃん“タイランド”だけ。案内してくれる人も違って、一緒になったのはトルコ人家族。4人の内、英語が分かるのは一人だけだったんだけど、彼女とのカタコトコミュニケーションはなかなか楽しかったのだ。私らが持っていた日本語のトルコガイドブックに載っていたトルコのトイレの写真見て笑っていたなぁ。まぁね、日本の和式トイレと同じ形だけど座る向きが違うという話を写真入で解説してあるんだけど、私だって日本に来た観光客が持ってるガイドブックに和式トイレの写真とか載ってたら面白がって見ちゃうもん。日本は扉に背を向けるけど、こっちでは扉に向かってしゃがむ。これはいつ敵が襲ってきても迅速に対応出来るように…とかいうらしい。日本って昔っから平和だったんだなぁ。
この家族連れはアンカラからやって来た人達で、お昼にはお父さんにジュースをご馳走になってしまいました。どうもありがと〜。
さて。夕方までの観光が終わったら私達(タイランドとはイスタンブルに戻るまで同じコースだった)はまた夜行バスに乗って移動する。往復夜行バスで丸2日の観光ってのは、やっぱりなかなか疲れるやね。ふぅ。
明細(一部抜粋) | TL | 円貨 |
ハマム(マッサージ付) | 6,500,000 | 1,568 |
アクビル購入 | 3,000,000 | 724 |
ケバブサンドイッチ | 200,000 | 48 |
ミネラルウォーター | 125,000 | 30 |
音楽テープ(2本) | 3,200,000 | 750 |
音楽CD(1枚) | 2,900,000 | 680 |
タバコ(samsunと2000) | 650,000 | 157 |
なんだかあんまり寝た気がしないけど、アジア側のウスキュダルを経由してオトガルに到着。サービス・トランスポーテーションで、スルタンアフメット方面へと向かい、アヤ・ソフィア前で降ろしてもらってまずはホテルへ。
さっそく出発前と同じ部屋に通してくれて、顔を洗ってハミガキして、やっとなんとか一息ついた。
今日はどうしようかなー。そういえば夜行バスでお風呂入ってないから…そうだっ、ハマムに行こう!
ふらふら歩いて向かったのはトラムのチェンベルリタシ駅前にあるハマム。焼けた円柱があるからすぐに分かる。でもね、最初はどこがハマムの入り口なんだか分からなくてちょっとウロウロしちゃったわ。
入り口で入場料を支払って、せっかくだからアカスリマッサージもしてもおう。え、女用は向こう? 入ったすぐは男性用で、さすがにひろ〜いスペースで気持ち良さげなんだけど、女性用は脇なのね…。とりあえず入り口のおっちゃんに指差された方向へ向かう。入り口の右側、ドアも何もなく、そのまま進むとすぐに左に曲がってロッカーがいくつも並んでいるのだ。うう〜ん…ここで脱ぐのかなぁ…。でもドアも何も無かったよね、それはなんか心もとない。もっと奥に進むと右へ曲がっていて、その先の左の扉がハマムの入り口。やっぱりあそこで脱ぐんだよねぇ…? とウロウロまた入り口まで戻ったら、気付いた受付のおじさんがトルコ語でさっきの所まで案内してくれ、女性のマッサージおばさんを呼んでくれ、タオルも貰ってここで着替えて奥に行くんだ、と説明してくれた。やっぱりここかぁ…。
ハマムに入るときは全部脱いでしまうのではなく水着でいいからパンツだけはつけていた方がいい、と何かで読んだことがあったので、一応ちゃんとビキニタイプの水着の下だけは持ってきていたのだな。とりあえずそれに着替えてハマムに向かう。まだ時間が早いから殆ど人がいないなぁ。中には先客が一人。あ、日本人のお姉ちゃんだ。
中に入るとサウナ状態でポカポカしていて天井高くて気持ちいい〜〜! 真ん中に大理石のヘソ石がどでんとあって、壁の回りに洗い場。洗い場で蛇口から出るお湯をかぶって頭を洗ってヘソ石に寝転ぶとね、丸くて高いドーム状の天井にポツポツと明かり取りの窓があって、寝転がってる下から暖められてボケーっと上を眺めるのって、すっごく気持ち良くって幸せでした。人もいないしねぇ。
しばらくボーっとしていたらマッサージおばさん登場。頭からつま先まで石鹸であわあわになりながらマッサージしてもらいました。ゆるくって私にはちょうどイイ感じかも。強めのマッサージがいい人には物足りないかもねー。でも、石の上にペラペラのタオル引いただけで寝転がってるから、うつ伏せになってごしごしやられると腰骨が石にあたって痛いよぅ。仰向けになると頭とか肩甲骨とか、い…痛い。
マッサージもいいけど、ハマムはヘソ石に寝転がってサウナで蒸されてるのが一番気持ち良かったな。気が付いたら1時間半近くのんびりしてた。なんだか一気に脱力〜〜って感じ(笑)。
昨日の夜行バスで疲れてたのもあったし、ハマムでのんびり脱力しちゃったから、今日はバスで新市街へ行ってふらついたら早々に引き上げよう。まずトルコのポップス物色して、お土産にいくつか目玉キーホルダー(ナザール・ボンジューウ)買って、おっとそうそう、会社の人用にこっちのタバコもね。
「何が欲しいんだい?」「えーっと、トルコのタバコが欲しいんだけど」「君が吸うの?」「ううん。お土産」「トルコのタバコだったらこれとかこれだけど」「ふーん。じゃあとりあえず、これとこれ1つずつでいいや(後でまたちまちま買えばいいし)」「ホテルはこの近く? お土産はお父さんにかい?」「え? 違うよ。会社の人達に」
……これってさーあ。私いったいいくつに見られてたんだろう(笑)。そりゃあ旅行中はいつにもまして年齢・性別・国籍全てにおいて不明になるみたいだけどね、私は。
とりあえずの欲しいものは手に入れた。さぁ、帰って今日は早く寝ようっと。
しかしバスに乗っていて途中で見た気温表示「31℃」って…。カッパドキアは朝がた暖房が必要なくらい寒かったのに〜〜。イスタンブルも朝晩は長袖必要なくらい冷えるのに〜〜。すっごい気温差。
明細(一部抜粋) | TL | 円貨 |
インスタント「エルマチャイ」×2 | 500,000 | 121 |
目玉キーホルダー×6 | 1,000,000 | 241 |
ドルマバフチェ宮殿&ハレム(入場料) | 5,500,000 | 1,327 |
アクビル補充(1200分) | 1,000,000 | 241 |
昼食 | 950,000 | 229 |
ロクム(トルコのお菓子、お土産用) | 1,000,000 | 241 |
ミディエドルマ×1 | 75,000 | 18 |
ふっあ〜〜〜! よく寝た! 気が付いたら12時間以上眠っていて、結局トルコに着いた翌日に微かに夜明けのアザーンを聞いただけで、それ以降聞いた記憶もなく寝ているなぁ。
沢山眠って気分スッキリ。さー、今日はドルマバフチェに行くぞ〜。
まずはエジプシャンバザールに寄って、カッパドキアに行く前に入ったお店に顔を出す。チャイやお菓子を貰いながらお土産を買って、エミノニュからバスに乗ってドルマバフチェだ。
そこからは22番のバスに乗ればいい、とガイドブックで調べて行ったのだけど…。ないなぁ、22番。コピーして持っていた地図をチケット売り場で見せて確認したら、今いる海側ではなく道路を挟んだ向かいのバス乗場から出発していると言う。ふむふむ。地下道通って向こうに渡るのね、オッケー、了解。ありがとう!
ううむ。乗ったはいいけど、ちゃんと降りられるかな、私。日本みたく車内案内なんて無いもんね。昨日はタクシムが終点だったから問題なかったけどさ。えーっと、ドルマバフチェ宮殿に行くには、カバタシってところで降りて歩けばいいのか。でもそれってどこらへん〜?船が発着するところだから、そろそろかなぁ…。とりあえず回りの人に聞いてみよう。「カバタシ?」「カバタシで降りるのかい? それなら次だよ」「次…ね。ありがとう」……「ほら、ここがそうだよ」「えっ、ここ?」えーっと、でもどうやってバス止めるの〜〜。ボタンないじゃん、このバス。えええ〜〜! 運ちゃんに直接声掛けるのかな。うわわわ、通りすぎちゃう〜〜。「おい、彼女がここで降りるから止めてくれよ」うわ〜、ありがとう兄ちゃん。助かった〜。あれ、兄ちゃんもここで降りるのね。「カバタシはあっちの方だよ」「ありがとうございます〜〜」あっ、せめてお名前を(笑)。なんて言う間もなくお礼を言ってる間に去っていく兄ちゃん。うん、本当の親切な人ってこうだよね。
ドルマバフチェ宮殿は入場料が高いけど、入るとすごいぞ。オスマントルコって、本当にすっごく力を持っていたんだなぁ。天井高い! シャンデリア豪華〜! 案内付きでしか入れないのがちょっと残念だけどね。でも庭はふらふらできるのだ。日陰で椅子に座ってボスフォラスを眺めているのなんて、もう…のんびり幸せ〜〜。
おっと、そうそう。今日は火曜日。14:00から軍楽隊の演奏があるんだよね。どこでやるんだろう、とぼーっとしてたら外のほうから音楽が聞こえてきたっ! 中庭でやるんじゃないのかぁ。慌てて外に出て行くと、入り口前の広場で演奏中。見れて良かった。
明細(一部抜粋) | TL | 円貨 |
トプカプ宮殿(入場料) | 2,000,000 | 483 |
トプカプ宮殿ハレム(入場料) | 1,000,000 | 241 |
考古学博物館(入場料) | 1,500,000 | 362 |
トルコ・イスラム博物館(入場料) | 1,000,000 | 241 |
エアポート・トランスファー | US$4.00 | 460 |
シュレイマン・モスク(靴預かり) | 50,000 | 12 |
夕食 | 1,800,000 | 434 |
早朝、地震で一瞬目が覚める。
夢うつつの中で「あ〜…なんか揺れてる〜〜。地震? 夏にあった大地震の余震なのかなぁ。んんん…でもそんなに揺れてないから平気だね〜。ねむっ」…って、危機感がないというか、大地震が来たら逃げ遅れるタイプかもしれない…。
一瞬だけ意識を取り戻したからか、今朝のアザーンは聞くことが出来た。結局トルコに来て朝のアザーンを聞いたのは2回くらいだ。
ゆっくり朝食、今日の出歩きは旧市街かな。
トプカプ宮殿行って、その周辺の博物館に入って。そろそろ帰りの空港までの足も確保しとかないとね。申し込んだら各場所でピックアップしながら空港へ向かってくれるサービス(エアポート・トランフファー)を旅行社で頼んでから、シュレイマニエ・モスクだ〜!
ああ、このモスクすっごく綺麗! ブルーモスクより観光客少ないから客引きもいないし、中に入って天井見上げているのって、静かでなんだか落ち着くなぁ。あんまりゆっくりしていたら夕方のアザーンの時間になりそうだわ。その前に中庭一回り〜。っと思ったらここにもやっぱりいるの〜?「ハイ! ツーリスト? フランス? ボンジュール?」って、ど〜こ〜がフランス人に見えるんじゃ! う〜ん、う〜ん。 この兄ちゃんとは振り切るきっかけがなくて結構話したけど、客引きではなさそうだけど、シュレイマンの霊廟とかも案内してくれて説明もしてくれたけど、日本人目当てのお兄ちゃんなのかなぁ…。それにしちゃ最初の「フランス?」ってのはねぇ…。でもやっぱり見分けが付かない〜〜。単に話しがしたいだけなんだったら申し訳ないけど、分からない時はとりあえず離れるに限る! この後ヴァレンス水道橋に行きたかったけど、そんなこと言ったら付いてきちゃいそうだし、友達とホテルで待ち合わせしてるから帰るね〜。え? ホテル? うんっとね、イェレバタン・ストリートにあるホテル。「それならこっちだよ」えーと、えっとー…どうしよう、付いてくるつもりかなぁ、だったらやっぱりどこかで振りきらねば! 「どこのホテル?」「えっ、いや〜、あの…小さなホテルなんだけどね」「オールドランプが沢山ある所? ひげの人がオーナーの」「あれ、知ってるの?」「うん。あ、この道入って最初の角を右に曲がったらホテルにつくよ。じゃあね」「あ、ありがと…」あ、なんか本当に普通の人だったのかな? だったら悪いことしたなー…。でも! 一応女の一人旅なんだから気を付けるに越したことはないのだ! うん。ごめんね兄ちゃん。
明細(一部抜粋) | TL | 円貨 |
ボスフォラス・クルーズ(片道) | 600,000 | 145 |
ミディエ・ドルマ | 150,000 | 36 |
ドンドルマ | 200,000 | 48 |
夕食1 | 1,750,000 | 422 |
夕食2(2人分) | 12,000,000 | 2,892 |
丸1日動けるのは今日が最後。ここまできちゃうと本当に早かったなぁ。
なんだか今日はちょっと天気悪いけど、でも今日しかないもんね、目指せ黒海! ボスフォラスを渡っていくぞ〜。
行きは船で約1時間半、帰りはアジア側をバスで走ってユスキュダルまで、そしてそこからエミノニュまで15分の船旅だ〜い。と言う訳で、船の切符は片道を購入。
10:35、いざボスフォラス海峡へしゅっぱ〜っつ!
本日は曇りで気温は23℃。船の上はちょーっと寒いね。終点のアナドル・カヴァウへ到着したのは12:10。ここから黒海が見える城壁までは坂道をどんどん登って行くのだ。結構距離あるんだけど、なんとか頑張って辿り付いた!曇っているのが残念だけど、わ〜、あれが黒海かぁ。こんな所にまでアザーンが聞こえるわ。
そして帰りはバスに乗って海沿いを走る。…ってガイドブックには書いてあったのに、動き出したらバスはいきなり山道を行きだして一瞬焦ってしまった私でした。どどどどどーしよ〜〜、バス間違えた? ってね(笑)。でも、しばらくしたらちゃんと海沿いを走る道に戻って一安心。そうだよね、ちゃんと乗る時行き先確かめたもん。トルコってアルファベットを基本にした文字で助かるわ〜。
いよいよ明日は帰国の日。荷物整理してシャワーを浴びて寝ようかな、っと思った時にホテルの部屋に電話が掛かる。ん? こんな異国の地で電話なんて、なんだ〜? 明日のチェックアウトのことかなぁ…。
「はい?」「お電話が入ってます」電話〜〜? いったい誰から? 何事?「はい?」「ハイ! ラン。ムスタファだよ、僕のこと覚えてる?」「って…。えええ〜〜! ちょっと昨日のシュレイマン・モスクの?」「そうそう、これから出てこない」って、兄ちゃん〜〜。やっぱりそういう人だったのか。普通のいいお兄ちゃんだと思っていたのに〜〜。「いや、あの…。もう遅いし眠いから」「じゃあ明日は?」「明日はもう日本に帰るの」「え? 9日間の休暇だって言ってたじゃない」「だから、9/22〜10/1のお休みなの。もう明日で終わりなの」「明日は何時の飛行機?」うひゃあ。えーっとえーと、ホントは15:30なんだけどな。でもそんな余裕あるなんて言ったら絶対その前にって言われそうだし、ええい!「12:00の飛行機」「じゃあ10:00に行くよ」ちょっとまって〜! 「あー、うーー…。10:00にはもうホテルでなくちゃいけないから。ごめんね」「メールアドレスは持ってる?」うわ〜ん、どうしよう…。「えーっと、ごめん、持ってない」「そう、残念だね」あ、よかった。とりあえず引いてくれて。ホテルの電話番号なんて言わなかったのに知ってたのね。兄ちゃん…。でもでもでも〜! トルコ語なんてまったく話せない、英語でさえロクにコミュニケーション取れない人間に電話まで掛けてくる? ねぇ。ええ、この兄ちゃんとの会話は全てカタコトの単語並べた日本語英語(苦笑)。ああ、疲れた。ビックリした。はぁ〜。
明細(一部抜粋) | TL | 円貨 |
ホテル代(1泊分) | US$45.00 | 5,392 |
朝食は昨日一緒になったCさんと一緒に中庭で。午前中は彼女と一緒にハマムに行って、旅の締めくくりだ。昨夜の一連の話しをすると、「午前中出掛ける時に外にいるかもよ〜」って言われたけど、それは私も一瞬考えた。でも多分大丈夫なんじゃないかとー…(大丈夫でした)。昨日の夜は本当に焦ったわ。
ハマムでまたもやひたすらだらだらして、一緒にホテルに戻ってくると日本語の出来る従業員Eさんが新聞を持ってやってきた。「日本はいま大変なことになってます。帰らないほうがいいかもね」「え?」「TOKAIMURA、知ってますか?」新聞を見せてもらってもトルコ語なので分かるはずもなく。「これを訳すのはとても難しい」という彼の話と新聞の写真を見てみると…。「トカイムラ?」「トウカイムラじゃない?」「あ、それはなんか聞いたことある名前」「ウランがどうとかプルトニウムがどうとかって、もしかして原発事故?」「えええー! トウカイムラってどこだっけ?」「東京から110Kmと書いてあります」「うわっ、関東なんだっけ。大丈夫なのかなぁ…。」
そう。東海村の原発事故の記事でした。トルコにいる間にメキシコでM7.5の地震があったというニュースもやっていたし、うわ〜、大惨事立て続け!
チャイをもらいながらエアポート・トランスファーのピックアップを待ち、これで本当に帰国なんだ〜。本当に早かったなぁ。このホテルすごく居心地よかったし、またトルコに来ることがあったらここに泊まりたいな。場所もいい位置にあるし、朝ご飯美味しいし(ここ、重大なポイント(笑))。
中近東、イスラムの雰囲気というのはここだけに存在する独特の世界だと思う。
日本からは馴染みが薄いだけに、余計そう感じるのかもしれないけれど。
まだまだ私の知らない世界がある。惹かれてやまない世界がある。
こうしてまた、再び訪れたいと思う地が増えていくのだ。