■出発前
ひたすらのんびりしにバリに行く!
でも行くからにはやりたいことだってあるんだよね。ということで、今回の目的は「1、だらだらと過ごす」「2、ジェゴグを聴きにいく」の2つです。
でも、この「2、ジェゴグを聴きに行く」というのがクセモノで、行けばどこかでやっているというものではなかったんだよね。インターネットで調べたところ、聴ける可能性は2つ。APA?のオリジナルツアーで第1&第3日曜日。そしてJASA TOURSのジェゴグ定期公演が第2&第4木曜日。この日程と自分達のスケジュールを調整して決まったバリ島旅行の日程は10月20日(土)〜27日(土)。これならJASA TOURSのジェゴグ定期公演に参加できるぞ!
しかーし。この事前情報を入手するまでが紆余曲折(笑)。
まず手っ取り早く、会社に入っている旅行会社に「ジェゴグを聴きに行きたいんです! フリーで行くからジェゴグを聴きに行ける日程を調べてください」と言っても情報は全く出てこない。「ウブドからそんなに離れているならタクシーでもチャーターして行ったらいいんじゃないか」なんて言われてさぁ。ちーがーうーのーー! ちゃんとウブドからツアーが出てるって話だから、私はそのツアーが毎日あるのか曜日によって出発が決まってるのか知りたいだけなんだよぅ。せっかく行くならピンポイントでツアーがある日に行きたいじゃない。でもジェゴグが何かも、それをツアーで聴きに行くことが出来るなんてのも、その旅行会社のみならず親元の会社も全然知らないみたいだし、泊りたいと調べたホテルも「取り扱ってないですねー」とそっけない返事。そりゃあね、旅行全般を扱ってると一部地域の詳細な情報ってのは難しいのかもね。
なんとか自分でも調べているうちに、インターネットで上記のごとくジェゴグの情報を探し当ててネット予約。ホテルに関しては人づてに紹介してもらった旅行会社が引き受けてくれて、日程も宿泊もジェゴグを聴くことも希望通りにコトが運んでいざ出発!
念願のジェゴグ! 久々ののんびり旅行!!
ジェゴグの日程やら旅行の日程やらホテル予約やら、直前まで流動的だったもんで発券もギリギリ。その為にチケットの受け渡しは、当日の朝に空港で。その旅行会社の人に手持ちで持ってきてもらいました。
実はこの頃、2000年にシリアへ行った時の話を旅仲間と合同で同人誌作成している最中で、出発前日の10月19日はその打合せ。小田蘭の所に泊り込みで4人が集合していたという状態でした(笑)。自由業&不定休職種&留学帰りの九州在住&一般企業勤務の4人はなかなか全員の予定が合わず、なんとか調整ついたのが10月19日だったのよ。20日は朝早く、小田蘭の出発に合わせて部屋を追い出しちゃってごめんでした(汗)。
成田からバリまではジャカルタ経由、トランジットを含めて約10時間。
バリ島に到着する頃にはすっかり夜です。そんでもって、ウブドは空港から車で1時間はかかるのだ。チェックインしたらもう寝るしかないじゃんね。小田蘭もみーちゃんも、そんなに夜には強くないしさ。
昨日はヤモリや蛙の声を聞きながら眠りについた。
明細(一部抜粋) 外貨 円貨 絵葉書1枚 2,000 24 昼食/カフェ・ロータス(2人分) 140,000 1,663 内訳:食事+ケーキ+コーヒー ビール(ANKER) 7,000 83 雨傘 16,500 196
今朝は起きると鳥の鳴き声が聞こえる。
風の音。川の流れる音。自然の音しか聞こえない。
エアコンのない部屋の天井では大きな南国のファンが回っている。網戸から入ってくる心地良い風。少し薄暗い部屋の中から明るい外を、ベッドに寝そべりながら眺めている。そのまま自然とまた眠りに落ちる。
朝食を済ませて部屋に戻ってくる。すでにベッドメイクが終わっていた。ピンとはったシーツの上に寝転がる。風に吹かれて暫しのまどろみ。なんて贅沢な時間なんだろう。
みーちゃんはそのままゴロゴロところがり続けている。小田蘭は外の光に誘われて散歩に出かける。それぞれが好きなことをして自分の時間を過ごす。これが出来るかどうかが、一緒に旅をすることが出来るかどうかの決め手だと思う。
お互いに気を使いすぎて遠慮をするようだと一緒に旅することは難しい。自分1人でも行動出来る人。相手が別のことをしていても気にせずに、自分で自分の好きなことが出来る人。そういう人でないと一緒にいる時間が長くなる程苦しくなる。みーちゃんとはここ数年、年に1度のペースで旅をしている。それはそういうことなのだろう。
昼頃に部屋へ戻り、ホテルのスパで2時間たっぷりバリ式エステのフルコース「ルルール」をしてもらう。オイルマッサージ、黄色い色のパック、ヨーグルトパック、最後に花を散らしたバスタブにゆっくり浸かって生姜のお茶を飲む。川沿いの部屋で渓谷を眺めながら。川のせせらぎと、静かに流れるガムランが耳に心地良い。至福の時間だ。
午前中は天気がいいのに、午後になると曇ってくるのは雨季だからだろう。
午後も遅くなってからウブドの中心へ出かけて行く。昼食というには遅い時間に入ったカフェは人もまばらで、食事をしていると雨が降り出す。蓮の葉が浮かぶ池に雨粒が落ちる。樹に降った雨が葉先を伝わり落ちる。
雨の音。カフェの隣りから聞こえてくるガムランの練習。
バリではどこにいても、ガムランが静かに流れている。
午前5時。外はまだ暗い。
明細(一部抜粋) 外貨 円貨 入場料/ネカ美術館 10,000 119 入場料/プリ・ルキサン美術館 10,000 119 昼食/カサ・ルナ(2人分) 61,000 725 エアメイル/日本まで1通 4,000 48 ↑後で調べたらこれは封書の金額で、葉書は2,500。 ヌール・サロン/クリームバス 65,000 772 インターネット(15分) 4,000 48 夕食/パンとケーキ 16,000 190
朝市へ行こうと目覚ましをかけたけど、昨日のエステでたっぷりもまれた全身が揉み返しでだるい。今日はこのまま寝ていよう。
午前7時。眠りたいだけ眠って起きる。
暗くなったら早く寝て、明るくなったら自然に目が覚める。なんて健康的な生活だろう。毎日がこうならいいのに。
25℃、80%
みーちゃんが持っていた温度計&湿度計は、午前7時半にして既にこの数値をしめしている。どうりで洗濯物が乾かないわけだ。
朝食を食べたら美術館へ行く。
ネカ美術館まで歩いて行けるのがいい。普通なら歩いてはいかない距離かもしれない。でも私達は歩くのが好きだ。目的地まで30分なら歩いていくのが基本。散歩だったら1時間は余裕でぶらつく。
ネカ美術館はいくつもの展示室に分かれていて、それぞれがとても風通しのよい作りになっている。この地に合った建物の中に、この地で生まれた芸術が展示されている。空間恐怖症ではないかと思うくらいキャンバス一面に所狭しと描き込まれた絵。色彩豊かな絵。セピア調の絵。神様を描いたもの。神話に民話。バリ舞踊。日常の姿。バリの作家。海外の作家。
プリ・ルキサン美術館では「万華鏡」という日本人アーティストの作品が展示されていた。
ウブドのメイン通りを端から端まで。美術館やサロンで休憩をしながらこの日はひたすら歩いていた。
バリのエステのひとつ、クリーム・バスは肩から上を重点的にマッサージ。頭を洗ってクリーム塗ってマッサージ。首から肩にかけてもオイルマッサージ。髪をスチームで蒸らしながら腕もオイルでマッサージ。あぁぁ・・・魂抜けそう。
約1時間のメニューの間、雨季の大雨に加えて雷まで鳴り出した。少し小降りになった所を歩いていると、頭におそなえを乗せた女性や正装した男女が同じ方向へ向かっている。その先には垂れ幕の掛かったダラム・ウブド寺院の入口。これがオダランのお祭りだった。
今朝ははりきって5時半に起床。1人でウブドの中心まで朝の散歩に行く。
明細(一部抜粋) 外貨 円貨 路上でおかゆ 1,000 12 TINO/フェイシャル 50,000 594 バリの正装3点セット 220,000 2,613 昼食/ムルニーズ・ワルン(2人) 111,540 1,325 内訳:食事+ケーキ+コーヒー 夕食/ベガーズ・ブッシュ(2人) 97,200 1,155
モンキーフォレスト通りを歩いてサッカー場の脇を曲がってハヌマン通りを北へ抜け、ラヤ・ウブド通りを跨いで更に北へ。途中の屋台でお粥を食べて更に進む。いくつか寺院を通り過ぎ、1本道をひたすら歩く。あまりに奥まで行き過ぎたかと降り返す。
ホテルへ帰る途中、竹ひごを束ねたような箒を持った子供達とすれ違う。列をなして子供達はダラム・ウブド寺院へ入っていった。これはきっと、毎日夜中まで続いているオダランのお祭りの後片付けだろう。朝の掃除は子供の仕事。学校に集まってから来ているようだった。
雨季のウブドは天気が良いのは午前中。午後からは曇りがちで雨が降る毎日。朝の晴れ渡った空からの日差しは、午前の早い時間と言えども強烈だ。たっぷり1時間半歩き回って既に万歩計は7,500歩。少し日に焼けたかもしれない。
シャワーを浴びてホテルで朝食バイキング中、みーちゃんがオムレツを作っているスタッフからお祭りの話を聞いてきた。バリの正装をしていると私達でも中に入れてくれるというのだ。そういうことなら今日の内に正装を買ってお祭りに行こう! 明日にはこのホテルをチェックアウトして、もっとウブドのハズレに移ることになっている。ホテルを移ったら、とても歩いてここまでは来れない。
午後から正装を買いに出かけるが、サルンという巻きスカート状にする布は沢山売っているのに正装一式となると、これがなかなか見つからない。バリ人女性の正装とは、サルンという布を巻いてスカート状にし、上は下着の上から直接レース素材のクバヤと呼ばれる長袖を着て、スレダンという帯をクバヤの上から絞める。店先にはサルンだけなら何処に行っても並んでいるのに、クバヤとスレダンが見当たらない。マーケットに行ってもあるのはサルンばかり。私達は3点揃って欲しいのだ。「いくらなら買うんだ? 2枚だったら●●ルピアにしよう。他の柄がいいの? いろいろあるよ」と交渉されてもサルンだけなら買わないよ。
帰国後に調べてみると、この正装はインフォメーションでレンタルすることも出来るらしい。でもやっぱり、着るからには気に入ったものを身につけたい。何軒か回って店先に正装を並べている店を1軒見つけた私達は、無事に値切って購入することが出来た。サルンの巻き方も教えてもらってホテルに戻ると、暗くなった頃を見計らって着替えて出発!
旅行中はめったにすることはないけれど、念の為にと持って来ていた口紅で化粧も施した。髪も纏めて前髪だけをたらす。お祭り仕様の日本人2人はホテルを出る前も、外を歩いていても、「日本人がきちんとバリの正装をしている」というだけで注目を浴びてしまったようだ。
ダラム・ウブド寺院の入口で受付をする。座っていたのは日本語が出来る青年男性2人組。驚いていると、今日はここに住む日本人女性がレゴンを踊ると教えてくれた。そうして白くて細い鉢巻の様なものを渡される。これを頭に巻くんだと言われたのでその通りにして階段を登る。この格好は……。頭だけ見ているとまるでお遍路さんのようだ。
屋根のある集会場のような所で音楽が始まった。ガムランを演奏する人達以外、舞台上には役者が1人。仮面と衣装を変えて様々に演じているのは仮面劇のトペンというものなのだろう。コミカルな動きが見ていて楽しい。
そのうちに客席まで降りてきて、子供達を見つけて近寄ってくる所がなんだか日本の“なまはげ”を連想させた。それにどうやら「バリの正装をした日本人」はここでも目立ってしまったらしい。バリの“なまはげ”が私達の所までやってくる。そういえば…みーちゃんは一緒にメキシコへ行った時もこういう時に目を付けられて舞台にひっぱりあげられていた。今回はその役が小田蘭に回ってきてしまったようだ。舞台に連れ出されはしなかったものの、子供たちの次にちょっかいを出されてしまう。
この場所以外でもそこかしこでガムラン演奏が始まり、御神体のある中心に続々と人が集まっているのが見える。さすがに単なる観光客である私達は遠巻きに眺めるだけにし、レゴンを見てから寺院を後にしたのは午後10時。
オダランの祭りはまだまだこれからが本番。メインの奉納芸能は深夜過ぎからの影絵(ワヤン)である。
バリへ出かける数日前、小田蘭はある一つの企画に申し込んでいた。
明細(一部抜粋) 外貨 円貨 ポーター・チップ(荷物2つ) 1,000 12 ↑基本的にバリではチップ不要。
現地発信の日本語情報誌「あちゃら」。ここが私達の旅行期間にピタリと重なる日程で、読者モデルを募集していたのだ。私達の旅にキッチリ決まった予定なんてない。今回は10/25にジェゴグを聴きに行くだけだ。おもしろそうだからと応募してみたら、旅行出発まで1週間を切っていたというのに決まってしまった。“エレファント・サファリ・パーク”で象に乗るという、アクティビティ系の企画という所が「いかにも」だなぁ。アンコールワット遺跡巡りの時の写真を送ったのが利いたのだろうか?(笑)
その、象に乗るのが今日である。
ホテルまで車で迎えに来てくれて撮影が終わったら次のホテルまで送ってくれるというのは、ホテル移動日であるだけにとても有り難かった。
日本にいた時から連絡をくれていたのはライター本人。彼女とあちゃらの現地スタッフ、カメラマン、カメラマン助手、エレファント・サファリ・パークのオーナー、みーちゃん、小田蘭、ドライバーの8名で車に乗って約30分。ウブド郊外のタロ村という所に“エレファント・サファリ・パーク”がある。
象に自分の手から直接エサをあげ、象の鼻で花輪をかけてもらい、象に乗ってパークの外をぐるりと1周。昼食はパーク内のレストランでバイキング。タイミングが重なり最新式のヘリコプターも直に触ることが出来た。帰りには道端でブタの丸焼き「バビ・グリン」に遭遇。盛り沢山の1日は撮影うんぬんなんて抜きにして楽しかった。
ホテルマップに表示されていたコースを辿る朝の散歩。軽い散歩のつもりが、予定外のアクシデント(?)で朝食の待ち合わせに遅れそうになる。
明細(一部抜粋) 外貨 円貨 ツアー代金/ジェゴグ(1人) US$35 4,165
純粋にホテルライフを楽しむ、そのためのホテル。
ウブドの外れに位置するここは、一般道から田畑の中を車で数分。道路脇にホテル名の表示がなければ、そこがホテルの敷地だとは分からない。車の音や人々の生活の音とは無縁の、静寂の中のホテル。ウブドの中心までは、2時間毎に無料のシャトルバスが運行している。たまにはこんなリゾートもいい。
午後になってウブドへ向かう。
モンキー・フォレストを通ってツアーの集合場所までのんびりと歩いて行く。これからバスで3時間かけてバリ島を横断、西部地方へ向かう。ずっとずっと、この土地で聴くことを願っていた、ジェゴグを聴きに。
体の芯から響いてくる重低音。たたみかけるような軽やかな音。体全体を使って楽器を叩く。隣りに並んだ2組が競争するように、ぶつかり合うように、演奏する。威嚇するかのように、声をだす。
楽器の下に潜りこむ。目を閉じる。体中で音を感じる。細胞の一つ一つに、音が、染み渡るような感覚。
その音が耳に残る。その響きが体に残る。
バリ島1週間。ビーチには1度も行かずにウブド周辺のみで過ごした休暇も今日で終わり。旅の最終日は、いつもなんだか切なくなる。
明細(一部抜粋) 外貨 円貨 空港/出国税 75,000 891
日本での時間。旅先での時間。どちらも同じ自分の時間なのに。
正午にチェックアウトを済ませると、迎えに来てくれていた車に乗ってデンパサールへ向かう。みーちゃんの高校時代の後輩が働くエステティック・ヴィラで数時間滞在してから帰国の途につくことにした。
いくつかのエステメニューの組合わせと、3コースから選べる食事。5時間の滞在中自由に使える部屋。
これからジャカルタ経由で約9時間も飛行機に乗る前に、ホテルをレイトチェックアウトしなくてもシャワーが使えるというのはとても嬉しい。しかも滞在先のホテルまで迎えに来てくれて、空港まで送ってくれるというのも有り難い。
毎日の朝散歩で日焼けた顔と髪を、ホワイトニング効果のあるフェイシャルとクリームバス、全身のココナツオイルマッサージでこの旅行最後のバリ式エステを堪能する。内容的にはウブドの通りにあるエステサロンの方が好きかもしれない。ここのは日本人向けに若干ソフトな感じがする。
バリを出たのは10/26の夜10時。夜間飛行を続け、成田到着は朝の8時だ。
入国のカウンターに並びながら、いろんな国のビザとスタンプが押してあるパスポートを捲る。
ふと。インドネシアの出入国スタンプはどんな形だったか探してみた。
出国の日付印が「10/25」?!
えーと・・・? 今日が10/27だから? バリを出たのって10/26だよね?? でも出国印は10/25。
アタシはいったい、26日どこにいたんでしょ。
空白の1日。
なんてオチのついた旅行なのだ。