三人吉三

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色彩と照明と音楽の妙。
やっぱり舞台って総合芸術だなぁ。

ステージのセットと役者だけでももちろん素晴らしいんだけど、そこに音や色や照明の効果が加わることによって、それが絡み合っていくことによって、より芝居の世界が深まるというか広がるというか。
演じる側も盛り上がるし、観ている方も引き込まれていく。
何か1つ欠けてもダメだし、どこかが過剰になり過ぎてもダメ。
この辺の足し引きが難しくて、大きな効果になるか、残念なことになるか。
今回の「三人吉三」はまさにその舞台に関わる全てが上手くハマっていた気がする。

1幕の始まりは客席が明るくてまだ席についていないお客さんもいる中、通路を役者さんが通っていく。
あれ?
と思っているとまた通路に出てくる。
席に向かうお客さんを上手くアドリブでかわしながら、ちょっかいだしながら。
そして舞台上では黒い薄い紗の幕の向うで江戸庶民の生活が動き出す。
左右に配置された附け打ちとパーカッションブースからの音、そして舞台上でも生活用品を使ってリズムを取り始める。
包丁でまな板を叩いているのって、なんだかNANTAを彷彿とさせるなー...、あ、他の物でも音出しているからSTOMPか?
そんな感じで1幕は今回の舞台の下敷きを説明するような構成で、百両と刀(庚申丸)の関係とか、その後絡んでくる人たちの繋がりとか、過去の犬殺しのシーンとか、合間に江戸の生活の様子を挟みながら。

主役たちがなかなか出てこないぞー、と思い出した頃に満を持して客席からお嬢吉三が登場!
待たされただけあるのか盛り上がりますねぇ。
そうして大川端の立ち回り!
舞台に配された本物の水を使った池と回る舞台。
黒子さん達が後ろでばしゃばしゃと水飛沫を上げ、舞台が回り、立ち回りに合わせてパーカッションや附けの音が鳴る。
和尚吉三が止めに入っきて三人で見得を切るシーンとかはもう、やっぱり歌舞伎の様式美ってものは素晴らしいや。
形があるからこそ、形がきちんとしているからこそ、そこから外していってもブレないんだな。

2幕は絡み合った複雑な因縁が1つ1つ判明して、いろいろ変わる場面転換にぐいぐいと引き込まれていく。
3人夜鷹の笑っちゃうシーンもあり、伝吉の独白を後ろで聞いてしまう和尚吉三の陰影も照明の具合が絶妙で。
伝吉とお坊吉三の立ち回りも陰影を強調した照明の使い方の迫力!
この舞台はなんだか個人的に照明の使い方がとても好きだ。
1幕の水面の揺らめきを天井や壁に投影して表現しているのとか揺らめきが綺麗で好きだったなぁ。
立ち見で観た時は全体が見渡せるものだから本当にうっとりしてました。
2幕最後の吉祥院のセットが割れて和尚吉三が双子の兄妹の首を持ってくる所の背景のざわめきと照明も鳥肌モノ。
綺麗だからこそ、余計に切なさが際立つというか。
そして、この吉祥院で全ての因縁が明らかになってから3幕に続く怒涛の展開にはトリハダ立ちまくりでしたよ!
ここに音楽が追い打ちをかけてくれるものだからもう!!

そうそう、今回は三味線とかの下座音楽を全く使わないということでも話題になっていましたが、正直言うと私は1幕の途中までそのことをすっかり忘れてました。
意識せずに見ていたというか。
違和感なく音が芝居に寄り添っていたからじゃないかと思うのですが、まぁ私が元々のこの演目を歌舞伎で観ていないから、というのもあるのかもしれないけどね。
この舞台の稽古をしている時期に、今回パーカッションで参加している熊谷太輔さんのtwitterで三人吉三の台本と一緒にハピドラムが写っている写真が上がっていて驚き、音楽監督の伊藤ヨタロウさんのtwitterでセネガル出身のタイコチームと録音したって写真が上がっていてまたまた驚き、どんな音楽や音がくるんだろうと思ってはいたのです。
ハピドラムなんて最近の楽器と、アフリカンな大地のリズムだよ?
twitterからは相当大変そうなご様子が伺えましたが、いやもうこれは...。
歌舞伎の演目にこうもハマるものかと。

「歌舞伎」とは「傾く(かぶく)」ものであり、その時代に於いては頭を傾けるような常識外れで斬新で派手で人を惹きつけるものであったというのはこういうことかと。
「歌舞伎」って今では敷居の高い芸術みたいになってきているけど、きっと当時の歌舞伎は今のアイドル芸能界みたいなものだったんじゃないの?
ロックやパンクやジャズであったかもしれない。
歌舞伎絵とかあった訳だし、それって今でいうブロマイド的なものとか。
歌舞伎の演目にアフリカンパーカッションと附け打ちを同時に合わせるのって、傾いてるよね。

で、2幕後半から3幕ですよ。
私が音楽をハッキリと意識したのは。
特に3幕!
大地に響くアフリカンなタイコのリズムとうねるギターにうごめく音。
真っ白い舞台上に映える主役3人の衣装の色。
追いつめられていく3人の様子が音楽によって拍車がかかって、ただもう圧巻でした。
この迫力の音があってこそ、のちの静寂が引き立つというか。
そして立ち見で上から観た時の白装束の追手の人達のフォーメーション!
これは...。
複数回違う方向から観た方がより楽しめる!!
いやー、ヤバイ舞台だったわー。
終演後はしばらくぼーっと脱力する感じで、舞台を反芻しながら帰路を辿る小田蘭だったのでありました。

で。
立ち見の2週間後にきちんと取れていたチケットで1Fの正面ブロック椅子席で観たのですが、観る場所の違いで音の感じがすごく違ってたのが驚きでしたね。
やっぱり椅子席での音がすごく良くて、特に附けの音!
あんなに響いていたとは。
立ち見が中2階上手側で附け打ちブースの上だったのもあるのかな。
日程違いでダブルキャストだったパーカッション担当も両方で観れたし、これは急遽思い立って公演半ばに当日券で立ち見に行ってよかった。
音は椅子席の方が断然良かったけど、大詰の立ち回りは上からの方が全体の動きが見えて好きだったな。
近い方が迫力なのは間違いないんだけど、見え方の違いまで楽しめたのも立ち見に行って良かったと思うこと。

でもって、今回全然お芝居繋がりではなくtwitterで繋がっていた人がこの舞台を観に行っていて、twitter上でこの話ができたことも嬉しいことでした。
すごかったですよね! と共感できるのはいいね。
そして音楽についても、
「Rockでしたね。白波ものにはぴったり。犬殺しでブルースあてたのには感服しました。」
と言っていたのも妙に嬉しく。
好きなものを褒められるのは嬉しいものなのだなぁ。

この三人吉三は7月後半に松本でも公演されるのだけど、市民参加者が加わったりもするらしいし場所が変わるとまた違う舞台になっていくんだろうね。
さすがにそれは見れないけれど(エジプトから帰った直後だし!(笑))、後日談や評判をどこかで目にする機会を楽しみにしておきましょう。

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このページは、小田蘭が2014年6月30日 01:10に書いたブログ記事です。

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