『ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン』(ネタバレ)

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松尾スズキ&伊藤ヨタロウでがっつり組む芝居のすごさよ。
コクーン歌舞伎ともいのうえ歌舞伎とも違う、新たな演劇スタイルの始まりを予感させる松尾歌舞伎とはこれか。

 ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン

個人的にヨタロウさん裏主役認定なお芝居でした。
舞台上段に設えられた御簾内で今回のキモである女性邦楽チーム「綾音」の方たちと一緒に座して義太夫語りと唄を担当し、御簾外でもギター弾いて歌ったり、二役で役者も少々。
芝居開始の節回しから始まり最後の掛け声と拍子木での幕引きまで、音楽作成だけでなく芝居の中でも音楽担当で全編ヨタロウファン万歳!

現実ともリンクする風刺を盛り込んだ現代エンタメ仕様に純邦楽の組み合わせが架空の世界を摩訶不思議に彩り斬新ながらハマる。
昨今の情勢まで盛り込んだ隠喩やパロディやオマージュと根底に流れるテーマ。
それらが観た人の頭の中で捏ね繰り回されていく芝居はさすが松尾さん。
なのだけど、御簾内が明るくなるとついそっちに目が行ってしまうヨタロウ音楽ファンなもので(笑)、咀嚼も含めて全体を俯瞰しにまた観に行きたい舞台です。

いやしかしそれにしても。
分かっちゃいたけど改めてヨタロウさんかっこいいよ。
唄はもちろん語りがもう...義太夫語れて唄えて(歌えて)芝居もできる存在感と雰囲気ある人なんて、『キレイ』のカミに続いて今回もヨタロウさんでないと成立しない舞台かと。
ヨタロウさんの関わる舞台はいつも新しいものを魅せてくれる。
『キレイ』初演で受けた衝撃。
最近では下座音楽を廃したコクーン歌舞伎『三人吉三』でアフリカンパーカッションやギターと立ち回りの迫力の融合。
今回は現代エンタメ演劇の進行を義太夫節で展開。邦楽器でジブリやルパンを奏でては所々でアラブ風味も醸し出し、裏ではヴァイオリンやキーボードの生演奏も加わり、後半に繰り返されるマーラーのアダージェットというカオス感。
還暦迎えてまだまだ攻めてるオジサマかっこええ。

邦楽の方々も御簾内で座りながらノリノリで踊ってヨタロウさんも動き回って歌ってるゴーゴーボーイズのダンスシーンが楽しくて好きだったなー。
寺島しのぶさんが着物で踊る振り付けもおもしろく、振付稼業air:manも松尾作品に強烈な印象を残してくれてます。
岡田将生くんの舞台役者としての素晴らしさも発見した今回の舞台。
後はもう、皆川バグワンと岩井ワギーのコンビが笑えて笑えて...(笑)。
他にもストーリーが進行しているのに皆さん周りで細かいことをされていて目が追い付かないったら。
最初にモチベーションなくなった時のワギーが両足の爪先に砂利積んでるのを見つけて密かに笑ってしまったりですね(本筋進行中)、吹越さんがヤギの角を研いでいる時に自分のヤギ髭使って日本刀のようにポンポンしていたり(本筋進行中)、さんざん阿部サダヲさんが座れない座れない言って大変なことになっていた椅子にしれっと座っていた岡田トーイとか(本筋進行中)。
あ、そういや2部冒頭のヨタロウさん弾き語りシーンで客席から「ヨタロウ!」と歌舞伎の大向うのように声がかかっておりました。

いろんなことがすごい舞台だったな。
しばらくこれで反芻できそう。

『ゴーゴーボーイズ』は男性版『キレイ』だと誰かが呟いていたのを目にしたけど、なんか納得。
トーイ/オカザキ役が出来る人が現れたら何年後かに再演されるかしらん。
『キレイ』で音楽が劇中生楽団から再々演でオケピを使ったオーケストラに変化していったように、『ゴーゴーボーイズ』も再演されたらどう変わっていくかもおもしろそう。
でもあのカオス感はヨタロウさんの義太夫節ならぬヨタロウ節があってのものだとも思うので、あれを本職の太夫がやるのはまたちょっと違うだろうしなぁ。
浄瑠璃そのものを鑑賞したいならそっちに行くさ。
異質と思われるものを絡ませてお互いギリギリの所を探り合っていくせめぎ合いの中で生まれる相乗効果がおもしろいのであって、まぁ難しい所でもあるんだろうけど、今回は本当にすごかった。

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小田蘭
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このページは、小田蘭が2016年7月14日 23:47に書いたブログ記事です。

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